“もしトラ”のリスクも…台湾新総統就任、意外な米中の思惑と日本がとるべき備えとは

国際 中国

  • ブックマーク

国民党とのパイプ

 その意味で、日本の行き過ぎた民進党支持にも問題があると、佐々木氏は指摘する。

「民進=親日、国民党=親中という極端なラベリングと、民進党とだけ付き合えばよいという極論は、大きな問題です。たしかに、前総統の蔡氏も新総統の頼氏も親日派ですから、日本国内の民進党人気も根強いです。しかし、今回の総統選、国民党および第三勢力である民衆党との得票率は極々僅差で、三つ巴状態でした。さらに、同時に行われた立法院選では国民党が勝利していて、ねじれ状態に陥っています。国民党がこれだけ台湾国内で重要な地位を占めていて、さらに次の選挙では政権交代の可能性もあることを考えると、中国との対話をあきらめ、米国と日本頼みの民進党の言うことばかりを鵜吞みにすることは得策とは言えません」

 実際に、民進党からの情報をもとにした日本人の“台湾像”は、実態とは異なるのだという。

「国民党とのパイプが希薄である以上、日本で得られる情報は、民進党側のバイアスのかかったものが多い。言ってしまえば、日台の防衛費を増額させ、自助努力を促すとともに、自国の武器をより多く売りたいという米国の都合も反映されているわけです。少なくとも、私が現地の関係者と話をする限り、あれだけの人気があるように見える頼氏でも、国民党からは『過激な台湾独立派』という見られ方をしています。日本から見える台湾の姿は、民進党や米国のフィルターを通した後のものであることが多く、必ずしも実態を映したものとは限らないことを、自覚しなければなりません。その意味でもやはり、情緒的な民進党政権への支持に偏り過ぎず、産官学で、国民党とも意思疎通を図っていくことも必要だと思います。蒋介石のひ孫にあたり、国民党の将来のホープと呼ばれている蔣万安台北市長が今月15日から18日まで訪日し、自民党の麻生太郎副総裁や鈴木貴子青年局長と面会していますが、こうした動きは評価すべきでしょう」

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 3 4 次へ

[4/4ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。