“もしトラ”のリスクも…台湾新総統就任、意外な米中の思惑と日本がとるべき備えとは

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「台湾有事は日本有事」

 しかし逆に言えば、数年後には台湾有事が現実味を帯びてくるという見方もできるということか。佐々木氏は、

「米国での報道によると、昨年のAPEC首脳会議の際に行われた米中首脳会談において、習近平国家主席は『必ず台湾を統一するつもりだ』と語ったといわれています。習氏はその時期こそ明言しなかったものの、2027年以降の台湾有事のリスクは高いと見るべきだと思います。ちょうど習氏の3期目が終わる頃で、4期目を見据え、大仕事を成し遂げたいのだろうという見方が大半です。さらに、米国の大統領選も28年に控えていますから、選挙前の軍事介入はしづらくなる事情も重なってくる。こうした点から、27年が、最もリスクの高まる年だと考えられます」

 決して遠くない未来に、日本の“隣人”をめぐって歴史的な武力衝突が起こりかねないのである。

「日本で台湾有事という言葉を見聞きしても、『台湾海峡を挟んで両国で衝突し合うだけ』などと、あくまで他人事としてとらえている方も多いかもしれませんが、決してそんなことはありません。例えば、中国側としてまずは、台湾を海上から包囲して、エネルギー製品等の必需物資の補給経路を断ったり、上陸の足場にしようとしたりする、封鎖戦略をとる可能性が高いと見られています。仮に米海軍がこの封鎖を解除しようとするなら、現実的には北東部から接近することになるので、つまりは与那国島や石垣島周辺が衝突の舞台になることだってありえるのです」

 さらに、と佐々木氏。

「封鎖戦略とは長期戦が前提。そうなると今のウクライナ戦争のように、数年単位の衝突へと長期化する可能性だってありますから、経済的、社会的な影響は計り知れません。特に、半導体の供給における影響は甚大です。ファンドリー(受託生産)では台湾のTSMCが世界シェアの60%以上を占めていますが、米ランド研究所によれば、米国とその同盟国が、台湾の生産喪失を相殺するのに十分な製造能力を構築するためには、2~5年かかるといわれています」

 何より、台湾が中国の支配の手に落ちるようなことが起これば、お次は沖縄のリスクが高まってくる。かつて安倍晋三元首相が「台湾有事は日本有事」と発言したことが物議をかもしたが、文字通り日本も当事者の一員なのだ。

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