“もしトラ”のリスクも…台湾新総統就任、意外な米中の思惑と日本がとるべき備えとは

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「もしトラ」がここでも……

 ここで一つの大きな変動要因となるのが、11月の米大統領選挙だ。

「もしトランプ氏が政権に返り咲くことになれば、台湾をめぐる不確実性は一層高まります。というのも、トランプ氏は何よりディール(取引)を重視する人物であり、『再選したら中国の最恵国待遇を見直す』などと、中国に対する発言も、貿易に関するものに偏っています。仮に中国に貿易戦争で圧力をかけ続け、中国が貿易面で大きく譲歩することがあれば、トランプ政権として、台湾については強くこだわらない可能性もあります。そもそもトランプ氏は以前から台湾を軽視しているきらいがあり、『台湾に半導体産業を奪われた』と公に文句をつけているだけでなく、中国高官の前で『台湾には関心がない』と発言したという話まであるほどです」

 そしてこう続ける。

「次期トランプ政権で、対中国政策のアドバイザーとなることが見込まれているアメリカ・ファースト政策研究所(AFPI)のスティーブ・イェーツ氏ら専門家は、米国による台湾防衛を強く支持しています。他方で、2期目のトランプ氏は政策ポジションではなく、『忠誠心で部下を決める』とも言われており、トランプ氏が再選した場合、こうした専門家の声に耳を傾けるかは未知数です。したがって2期目のトランプ政権では、米国が台湾有事に介入しないというオプションがありうることに留意すべきでしょう」

 だからこそ、日本はあらゆるシナリオを想定して有事に備えておかなければならないという。

「日本にもこれだけのリスクがあるのに、それらに対するシミュレーションができていません。例えば、台湾海峡周辺のシーレーンが封鎖され、恒常的に物資輸送が滞るようになれば、国内は燃料不足に陥り、原発の再稼働を一層進めざるを得なくなってくるかもしれない。そして何より、台湾防衛に日本単独で介入するのは困難ですから、アメリカとの協力体制は不可欠。日本の国益を守るためにも、アメリカに対して台湾防衛の重要性を説き続けることが求められています。加えて、アメリカ政府として、国家安全保障担当大統領副補佐官、国務副長官、国防次官補等が台湾側のカウンターパートと安全保障対話をしているように、日本もアメリカを介して、台湾と意思疎通数だけではなく、当局間での安全保障協議のメカニズムを強化すべきだと思います」

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