「蛇口に尻こすりつけ男」が奇行に出たワケは? “恐れを知らない変態”にもはや感心(中川淳一郎)

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 東京・世田谷区の芦花公園で水道の蛇口に尻をこすりつけた56歳の男が、下半身を出したまま自転車に乗っているところを職務質問され、自撮りした蛇口動画も見つかり公然わいせつの容疑で逮捕されました。さらに、芦花公園は蛇口の使用を禁止し、取り替えに追い込まれたため、男は器物損壊容疑でも逮捕されました。

 時々ある変態ニュースなのですが、私が感心したのはこの男が「自営業」であるという点です。私自身もこの23年間自営業であり続けているため、自営業がいかに不安定かはよく分かっています。だからこそ、下半身を出して公園の蛇口に尻をこすりつける様子を自撮りし、その後スッポンポンで自転車に乗る行為をして一発で仕事が吹っ飛ぶことは避けたい。

 自営業といってもピンキリですが、その道においては優秀だったのかもしれない、なんてことも思うわけです。しかしながらこんな性癖が報じられたら客は遠のいてしまうでしょう。それなのに自身の欲望を満たすために人が多い芦花公園で蛇口に尻をこすりつけるばかりか、その後下半身丸出しで自転車に乗る。よくぞ仕事を失う恐れがある行為ができたものだ。

 とはいうものの、自分の身近にもヘンテコなヤツは多かった。大学時代、なぜか常に上半身裸でキャンパス内を歩く男がいて、理由を聞いたらこう答えた。

「オレは乳首から生えたこの長い毛を見せつけたいんだ」

 確かに彼の乳首からは20cmはあろうかという長い毛が生えていました。「抜いていい?」と触ろうとしたら手をバシッとたたかれ「やめろ。運が落ちる」と怒られてしまいました。

 会社員時代、OB訪問(実質的には1次面接)に来た学生と会うとスーツの股のあたりがザックリと裂けている。それを指摘するとこのKという男はいきなり寝転んで「見てください! こんなに開いてるんですよ!」と自慢する。まぁまぁ、それはさておき、と会社のラウンジでお茶を飲みながら面接をするとこんなことを言いだす。

「僕のスーツ、破れていましたが、大学でも破れたズボンをはいて、アソコをブラブラさせて歩いていたんですよ! 涼しくて気持ちいいですよ!」

 Kはあまりにもアホな学生でしたが、広告会社(博報堂)だから、こんなヤツもいていいな、と思い、私は人事に対して推薦をしました。当時はOB訪問で2人以上から「A」か「B」の判定を受けた学生が人事面接に上がるシステムだったのですが、彼は私を含め2人からB判定は得たものの、他の4人が最低の「D」判定。コメントには「あまりにも下品過ぎる」なんて書かれています。

 そのため人事も迷って彼をなかなか面接しない。そこでもう一人B判定をつけた社員と一緒に「あいつは面白いから面接に呼んでください」と人事に直談判。なんとか面接をしてもらいましたが、最終面接で落ちました。

 しかし、業界1位の電通には入り、8カ月で辞め、その後私の下で編集者になるというワケの分からん人生を過ごしたK君。変態ニュースを見ると彼のことを思い出します。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

週刊新潮 2024年4月25日号掲載

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