大腸がんで「余命1年」と宣告され、不倫相手は逃げた…60歳夫が今になって知った彼女が消えた意外な真相

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突然の「余命1年」

 5年ほどそんな生活が続いた。娘が大学を卒業して大学院に入ったころ、祐揮さんは体調がすぐれない日が多くなった。年だなあと苦笑していたが、そのうち食事ができなくなり、ついに病院へ行った。

「高校時代の親友が、大学病院に勤めていたので彼を頼りました。そうしたら大腸ガンで余命1年と言われて。かなりパニックになりましたね。今後の治療予定などを聞かされたけど耳に入ってこない。自分の命の期限を切られることで、あんなに慌てるなんて、人間ができてない証拠だとつくづく思いました」

 手術、化学療法、放射線治療と治療は進むが、あまりのつらさに彼は体力も気力も失いかけていった。それでもできる限り、仕事は続けた。同業の仲間や取引先には、いっさい病気だとは知らせなかった。2年ほどたったある日、帰宅すると季衣さんがいなかった。彼女の荷物もそっくりなくなっていた。

「これ以上、つらくてめんどうを見られない。ごめんなさいと書いたメモだけが残されていました。それを見たら、笑いがこみ上げてきた。結局、季衣は僕が病んだら一緒にいるのが嫌になったわけですよね」

 そこへ娘から連絡が入った。「帰っておいで」と娘は言う。だが今さら、妻の元へは帰れない。

「大丈夫。ママも帰っておいでって言ってるからと娘が言うので、ちょっと顔を出してみました。げっそり痩せていたので、妻はびっくりしたようですが、何も言わなかった。戻ってきていいかと尋ねると、妻はかすかに頷きました」

 ひとりでいるときに倒れたらどうしようという不安も大きかったので、彼は荷物を整理して家に戻った。アパートはすでに季衣さんが解約手続きをすませていた。

「あれから娘に励まされて闘病を続けています。3年目で再発したり、いろいろあったけど、親友である医師によれば『奇跡的だよ』というくらい回復して。最近、ようやく体調が安定してきたので、仕事もかなり以前に近いくらいバリバリやっています」

 以前の写真を見せてもらうと確かに今のほうが痩せてはいるが、肌の色艶は悪くない。家に戻って3年ほどがたち、彼自身は「期限つきの命だったけど、一応、その期限はなくなった」とホッとしているそうだ。

「でもやはり一寸先はどうなるかわからないといつも思っています。再発のリスクはずっとあるわけだし、1度は宣告された身ですから」

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