千葉大学新学長は「人格は高潔」で物議…議事録公開が火に油…学長選は医学部による出来レースだった

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新型コロナ「5類になっても補助金を」と求めた横手新学長

 ちなみに、宮坂議長と河田委員が《人格は高潔》として猛プッシュした横手氏の師は、やはり医学部出身の齋藤康・前々々学長(81)だという。そしてこの齋藤氏も、河田氏とともに20年の筑波大学長選考会議のメンバーを務めていた。

「筑波大でも千葉大と同じような顔ぶれが、同じように物議を醸す人選を行っていたのです。議事録には横手さんを推す理由のひとつに《英語の論文が多い》というものもありました。でも、山田さんは近世中国史の専門家。医師と比べて英語論文が少ないのは当然です。

 昨年12月、東京大学が日本の大学として初めて『研究評価に関するサンフランシスコ宣言(DORA)』に署名しました。DORAでは、研究の評価は量ではなく質、それぞれの研究領域の特性が重視されるべきなどとされている。どんな学問領域であろうと英語論文の数だけで評価するという不公正な慣行のせいで、現在まで世界の大学ランキング上位が欧米の大学に独占されたままなのです。それを改めようというのが現在のワールドスタンダードなのに……。まさに老害ここに極まれりですよ」(同)

 というわけで、千葉大学長選の結果は議事録が公開されたことで「火に油」が注がれた状態になった。ただし、すでに触れたとおり、宮坂議長は公開した説明文の末尾で《今後新たな文書等が提出された場合も、これ以上の説明は行いません》と力強く宣言している。

 そして、就任が既定路線となりつつある横手新学長には、もうひとつの顔がある。

 新型コロナウイルスの感染症法上の分類が5類に引き下げられることが決まった昨年2月、一般社団法人・全国医学部長病院長会議の会長でもある横手氏は記者会見で「各病院はぎりぎりの収支でやってきた。赤字のままでは通常診療ができない」と主張し、5類移行後も診療報酬の加算、病床確保や病棟閉鎖に対する財政支援の継続を訴えた。

 しかし、当時、いわゆる“幽霊病床”が問題視されていたこともあり、コロナ禍で補助金を受けた国立病院や国立大学病院などの収支を会計検査院が調べたところ、千葉大附属病院を含むそれらの病院では21年度だけで補助金収入が平均14億円あり、平均約7億円の黒字となっていたことが発覚している。

 これを選考会議が評価した「健全な経営」手腕と取るか、学内の不満分子の言う「金稼ぎが上手い人」と取るかは、永遠に平行線をたどる価値観の違いなのかもしれない。

デイリー新潮編集部

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