「日本人には果物が足りない」 がん罹患率と死亡率が低下…ダイエットにも最適な理由とは

ドクター新潮 ライフ

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日本人が果物を食べない理由

 昔から果物は「水菓子」とも呼ばれ、食生活における必需品ではなく嗜好品であり、「食べても食べなくてもよいもの」と捉えられてきた影響もあるでしょう。

 第2次大戦中の東條英機内閣で“果物伐採令”が出されていたことをご存じでしょうか。食糧不足に陥ったことを受け、「ぜいたく品である果物なんて要らないから切ってしまい、代わりに米を作れ」というわけです。実際は傾斜地の果樹を伐採してもそこに田んぼなんか作れないわけですが、果物がいかに軽視されていたかが分かります。

果物を取り入れたダイエット

 そして、果物不足を招いたもうひとつの原因は、嗜好品、すなわち甘い果物を食べると「血糖値が上がる」「太る」「中性脂肪が増える」といったイメージが、ダイエットブームと相まって広まってしまったことでしょう。

 しかし、これらは全て誤解です。例えば、アメリカ食品医薬品局(FDA)が果物に含まれる果糖やその他の糖分と生活習慣病との関係を調査した結果、果物に含まれる果糖は高脂血症(脂質異常症)の原因ではないとともに、肥満や心臓病の直接的な原因でもないことが判明しました。後にWHO(世界保健機関)が検証し、FDAの報告は正しいと結論付けられ、果糖などはエネルギー源として重要であるとされています。

 また、1991年にアメリカで始まった「5 A DAY(ファイブ ア デイ)」という「1日5サービング(摂取単位、果物なら1サービングは握りこぶし1個分)の果物と野菜を食べましょう」という運動によって、がんの罹患率および死亡率が下がり、アメリカで最も成功した健康施策のひとつと評価されています。

 さらに、97年に世界五大医学誌のひとつ「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に掲載された論文では、果物と野菜を多く取り入れた栄養バランスの良い食事群で顕著に血圧が下がる効果が認められました。この食事内容は「ダッシュダイエット」と名付けられ、ビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富な果物と野菜を多く摂取することが推奨されています。

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