息子は引きこもり、娘は万引きして補導…家庭からの逃避で、20歳年下女性と不倫に走った49歳夫がいま、逡巡している理由

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前編【僕は“愛人の子”で両親に絶望していた…今度は自分が不倫して、人生の正念場という49歳男性が明かす“苦悩の核心部分”】からのつづき

「ここで逃げてはいけないのかもしれない」「正念場とでもいうんでしょうか」と悩む西野慎司郎さん(49歳・仮名=以下同)には、20年連れ添う妻、そして4年つづく不倫関係の女性がいる。19歳の息子は引きこもりで、16歳の長女は反抗的。父親に認知されない存在として母に育てられた慎司郎さんも、出自を知ったショックで一度は道を外れかけた。就職し「自分の指針」のような存在だと感じる5歳年上の由依子さんと出会い、交際経験のないままプロポーズした。

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 結婚後はふたりとも仕事優先だったが、ある日、妻に妊娠を告げられた。慎司郎さんは帰宅後、それを聞くなり家を出てしまった。急に「子どもをもつ」ことが怖くてたまらなくなったのだ。30分ほど外を歩いて帰ると、妻は「ご飯、食べよう」といつもと同じような口調で言った。

「結婚するとき、妻には自分のことを話してはいました。妊娠していると知ったら、どういう態度に出るかは想定していたと彼女は笑っていた。この人はすごい人だと思いました」

 長男に続いて長女も生まれた。由依子さんは仕事を続けながら、うまく周りの協力もとりつけて家庭を回していた。

「それを見ていたら、なんだか僕なんていなくてもいい存在なのかもしれないと思いました。当時、家を買ったときも思いました。ペアローンでそれなりの保険にも入ったので、僕が死んだら僕の分のローンは相殺される。生命保険もでるからそれでローンを繰り上げ返済すれば、妻子の生活に大きな変化はない。僕の存在って何なんだろうと思いましたね。妻はそんな僕の気持ちもお見通しで、『あなたの価値は存在していること自体だからね』と釘を刺されました」

 自分のことをすべてわかってくれていると信頼を寄せた妻なのに、だんだん彼はコントロールされているような気になっていった。妻への気持ちが変わったのか、妻との関係を変えたくなったのか。

「実は僕、妻が初めての女性だったんですよ。当然、彼女は見抜いていたでしょう、何も言わなかったけど。性的な意味でも彼女に主導権を握られていた。彼女は決して、僕を支配しているつもりはない。でも僕が勝手にそう思ってしまう」

部屋から出てこない息子、万引きした娘

 小学生時代の長男は「できる子」だった。勉強もスポーツもできた。友だちからの信頼も厚かった。それなのに中学に入ってすぐ、学校に行きたくないと言うようになった。慎司郎さんにはわかった。何かがあったのだ。自分もそうだった。

「最初のうち息子は、学校へ行くふりをして、僕らが出勤してから戻って家にいたみたいですね。でも学校から連絡があってすぐにバレた。すると息子は部屋から出てこなくなりました。ひきこもりたい気持ちはわかるけど、それをやったらずっと出てこられなくなると思ったから、僕は力ずくで出そうとしました。目を覚ませと平手打ちしたことも何度もあった。でも彼は頑なでした」

 部屋から出てこない息子に、妻は寄り添うでもなく放置するわけでもなく、淡々と接していた。食事は適当に用意しておき、土日になると息子が出てきやすいように「午後から2時間くらい誰もいない」と書いたメモを息子の部屋に滑り込ませたりする。彼が出てくるのをじっくり待つつもりらしかった。

「そんなのはダメだという僕と、話せる環境を作るしかないという妻。けんかが絶えませんでしたね。そして気づいたら小学生の娘が万引きしてつかまっていた……」

 娘が寂しかったのは明らかだった。妻は気丈に「教科書のように娘を叱って、その後、抱きしめた」らしいが、それで娘の心が埋まるわけではなかった。

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