息子は引きこもり、娘は万引きして補導…家庭からの逃避で、20歳年下女性と不倫に走った49歳夫がいま、逡巡している理由

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「きみたちはこれからが人生なんだよ」

 小学生で万引きをした娘は、中学時代にも何度か補導されている。だが慎司郎さんはやはり怒ることしかできなかった。娘は母とも衝突を繰り返したが、よく考えてみると中学時代の補導はすべて夜遅くまで繁華街にいたことで、そのころは万引きもしていないし男性との交遊もなかった。ただ家に帰りたくなかったのだろう。

「彼女は母親への反発が強かったみたいです。でも息子が出てくるようになった時期と前後して、娘が『大学を受けたい』と言い出したんです」

 まるで自分を見ているようだった。

 もちろん、それで家族が晴れてうまくいくようになったという話にはならない。息子の状態も浮き沈みがあり、娘もせっかく行き始めた塾をあっさりやめてしまったりもする。それでも「まだ間に合う」と彼は思っている。

「子どもたちは若いから、将来がある。将来のことなど具体的に想像できないかもしれないけど、きみたちはこれからが人生なんだよと伝えたいんです。これは莉央にも伝えたけど、彼女は納得してくれない」

ここで家族を手放したら…莉央さんを手放さなければ…

 半年ほど前から、彼は人生の正念場だと痛感するようになった。今、ここで家族を手放したら、もう自分は生きていけないだろう。そして莉央さんを手放さなければ、のちに莉央さん自身が後悔するだろう。本気で好きだとは思っていたが、4年にわたって夢を見せてくれたのだから、これでいい。

 とはいえ、莉央さんは納得していない。どんなに彼女の人生はこれからだと言っても「何かっこつけてるの。私と別れたいだけでしょ」と言われてしまう。そしてそうやって怒ったときの彼女の顔は、非常に妖艶なのだとそうだ。

 道筋は見えているのに、そこに向かって着実に歩いていけない慎司郎さん。最近、妻からコントロールされている感じが薄れているのは、妻の言動も変わってきたからではないのか。妻も家族を再構築したいと思っているのではないか。慎司郎さんからの話だけでは判断しづらいが、どう考えても妻の気持ちを想像するのが上手ではないようだ。

「僕自身も、人生、ここから。ゼロから始めなければいけないんでしょうね。いろいろ大変なことが山積みですけど、逃げずにちゃんと生きてみたいと思っています」

 どこか頼りなげな言い方ではあったが、嘘ではなく、真摯に前を向こうとしている。そんな雰囲気だけは漂っていた。

前編【僕は“愛人の子”で両親に絶望していた…今度は自分が不倫して、人生の正念場という49歳男性が明かす“苦悩の核心部分”】からのつづき

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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