渦巻く嫉妬で「源氏物語」よりドロドロ… 「光る君へ」を最高に楽しむ鑑賞法を伝授

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 平安の貴族社会が舞台となるのは初だとか。今年のNHK大河ドラマ「光る君へ」は世界的古典「源氏物語」の作者・紫式部が主人公だ。人気古典エッセイスト・大塚ひかり氏が、現代と異なる身分と階級が元になった人間関係を鍵に、目からウロコの鑑賞法を伝授する。

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「源氏物語」を書いた紫式部が大河ドラマの主役になる。

 世界的な大古典の作者なんだから、今まで主役にならなかったほうが不思議だが、平安中期の都では派手な戦闘シーンも期待できないし、「源氏物語」は現代人とは無縁な王朝の恋愛ドラマと思われがちだからだろう。

 しかし実は、平安中期というのはそんなに優雅な時代ではなく、貴族たちもお気楽ではなかった。

「源氏物語」自体、政治闘争を描いた小説でもあるし、経済小説として読むこともできる幅の広さをもっている。

 物語そのものが「大河ドラマ」であるともいえるのだ。

時代劇から現代劇にスライド

 ストーリーは4代76年以上にわたる長大なもの。物語の幕開けの時代設定は、展開する音楽の研究から、延喜・天暦の治とたたえられた醍醐・村上天皇の御代であることが分かっている(山田孝雄『源氏物語の音楽』)。物語の終盤では横川(よかわ)の僧都(そうず)という、紫式部と同時代の人物をモデルにしたことが明白な僧侶が登場し、そこに至って当時の読者は「これは現代の物語である」と気付く構造になっている(今でいえば、第2次世界大戦後から物語が始まって令和の現代に至る感じ)。

「源氏物語」は、当時の人にとって理想的な時代を起点として紡がれた、時代劇から現代劇にスライドする大河ドラマなのである。

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