62年前、曲は3番まで作られたが…「有馬兵衛の向陽閣へ」の有名CMソング秘話

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リニューアルもキダ・タロー

 歌ったのは当時新人歌手の仲宗根美樹さん。その後、レコード大賞や紅白歌合戦にも出場し、人気歌手として成長した。なんとも豪華な取り合わせのCMソングが現存していないというのは、とても残念だ。

「昭和40年台には関西・関東・中部エリアで頻繁にTVCMを流していたので、今の50代以上の方には間違いなく知っていただけているのではないかと思います」

 その後、キダ・タローさんがこのCMソングをリニューアルしたという。

「これもまたテレビ番組の企画なんです。テレビ大阪の『なにわの名曲 紅白歌合戦』(2018年7月放送)の中で、このCMソングが名曲だということで、キダ・タロー先生に聞きに行かれたそうです。そこで、サビしか今はわからないことをお知りになった先生が、じゃぁ作りましょうかと言ってくださったので、番組の中で作っていただきました」

 以前の楽曲の情報がない中、どのようにリニューアルされたのだろうか。

「サビ部分だけを使い、まったく新しい曲を作っていただきました。“有馬兵衛の向陽閣へ”という言葉を生かし、そこから思いっきり広げていただいた歌詞を、もず唱平先生に作っていただきました。1番の歌詞には新婚旅行で、2番では銀婚式で、3番では金婚式で向陽閣を訪れる様子が歌われています。実際これにピタッと当てはまるお客様もいらっしゃるんですよ」

芸能人効果とレトロブームで若者人気も

 他テレビ番組の取材やロケで旅館を使われることが多いそうで、

「以前、関西のCMをAKB48がジャックするという企画があったんですね。そこに向陽閣が応募し、CMを作っていただきました。またSMAPの『はじめての5人旅』という企画でSMAPの皆さんに来ていただいてからは、今でも聖地巡礼としてファンの方に来ていただいたりもしています。できるだけ知っていただけるように、テレビの取材もお受けするようにしています」

 以前ほどにはTVCMも流していないというが、今も不定期に流したりするほか、YouTubeのCMで流れたりもするそうだ。

「今後はSNSでのCM配信や動画配信に力を入れていこうと考えています。当館は、平日は50代、60代の方が多いですが、土日は若い方で賑わっています。最近はレトロな雰囲気のものが若い方から評判がいいということで、あえてレトロな作りの映像を流してもいいかな、などと思案中です。老舗ということで敷居が高いと思われることが多いのですが、できる限り敷居を下げて、皆さんに気軽に来ていただけるよう目指しています」

 リニューアルされたCMソングで歌われるように、何かのお祝いの折にでも兵衛向陽閣を楽しんでみてはいかがだろうか。

中西美穂(なかにしみほ)
ジャーナリスト。1980年生まれ。元週刊誌記者。不妊治療で授かった双子の次男に障害が見つかる。自身の経験を活かし、生殖医療、妊娠、出産、育児などの話題を中心に取材活動をしている。障害児を持つオンラインコミュニティ・サードプレイスを運営。

デイリー新潮編集部

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