安すぎる「熊出動手当て」に猟友会員が悲鳴 「費用含めたらほぼボランティア」「命張ってるのに人を舐めてる」

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「簡単には変わらない」

 知られざる現場からの悲鳴――。長野県の担当者に実態を尋ねてみると、

「はっきりした原因まではわかっていないものの、今年の熊の目撃数は格段に多く、昨年度と比較して、10月は50頭から156頭に、11月は26頭から117頭にまで増加しています。基本的には山林での目撃ですが、農林業の被害額も大きく、ここ数年は1億円超えが続いています。たしかに、熊対応の担い手を確保することは課題としてとらえていまして、狩猟免許取得の呼びかけや、腕を磨いていただくための研修会の開催などは行っていても、簡単に増やせる状況ではないというのが現状です」

 待遇面については、

「『活動経費』としての補助金が出ている町村も一部ありますが、実際に熊が出没した際の対応や、それに関する手当てや報奨金については、各市町村の裁量になっています」

 ということで、実際にいくつかの市町村に聞いてみると、捕獲等までの一連の対応に数万円を支給するという地域も一部あったものの、多くは「時給1000円」「1回の出動につき3000円」などという似たり寄ったりの状況であった。ある市の担当者からはこんな声も。

「出没数が多くなったことで、このような問題が浮き彫りになったように思います。ですが、予算にも関わる話なので、一自治体で簡単に『では手当てを拡充しましょう』というわけにもいかない事情はあります。これを機に、県や国として、何かしらの補助を検討していただけたら、というのが正直なところです」

 容易には変わりそうにない実態に、先の猟友会員はこう漏らす。

「自分の時給を上げてほしいという話ではありません。技術が必要になるため、担い手を増やすのもあまり現実的ではないのもわかります。だからこそ、限られた人員でも持続的に対応にあたることができるよう、体制や待遇面をもう少し考え直していただくことも必要なのではないでしょうか」

 今や熊は大きな社会問題の一つである。現場からの問題提起に耳を傾けなければならないのは、当事者だけではないのかもしれない。

デイリー新潮編集部

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