笑顔をつなげるグローバルエンターテイメント企業へ――辻 朋邦(サンリオ社長)【佐藤優の頂上対決】

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キャラクター作りの極意

佐藤 そうした事業とともに経営の中心にあるのは、キャラクターのライセンス事業ですね。いま、その割合はどのくらいですか。

 38%くらいですね。ライセンスビジネスは約130の国や地域で展開しています。

佐藤 やはりハローキティですか。

 世界的にはそうですね。ご存じの通り、1990年代に国内で、2000年代には欧米でもブームになりましたから、世界的に知られている。ただ弊社で行っているサンリオキャラクター大賞だと、ハローキティは例年5位くらいです。1位はシナモロール、2位ポムポムプリンという年が多い。

佐藤 ハローキティがこれだけ長く愛され続ける理由は、どこにあるとお考えですか。

 私どものキャラクターは、まずモノから始まるんですね。幼い頃のお弁当箱であるとか、ハンカチやランチョンマット、あるいは筆箱などの文房具ですね。だからその方の人生の中で、それを使ってきたという思い出になっている。

佐藤 しかも日常的に使うものです。

 そもそも私どもは小物雑貨から始まった会社で、日々使うものにキャラクターのデザインを入れたところから成長してきました。それを持っていた方が50年たって、例えば孫にも買ってあげようと考える。そのサイクルを持っているのが、長年続いているキャラクターですね。

佐藤 それも時代に合わせて少しずつ変わっていますね。

 はい。そこは私どものデザイン力で、時代ごとに少しずつ変えてきています。

佐藤 少し前までモノからコトへ、と言われていたでしょう。私はこのところ、コトからモノへという逆転現象が起きているんじゃないかと思うんです。ウクライナの戦争でも、米中対立でも、クローズアップされたのはモノです。ロシアが西側連合に負けないのは、自国で生産できるモノがあるからなんですね。モノがあることの重要性が改めて認識されている気がします。

 そういう面はあるかもしれませんね。モノからコト、コトからモノへと行ったり来たりしているのかもしれません。それはデジタルからリアル、リアルからデジタルも同様で、一方通行ではなく、行き来するようなところがある。ですから両方でキャラクターを回していくことが大事だと思いますね。

佐藤 つまり、ぬいぐるみとLINEのスタンプの同時展開ですね。

 これまで私どもは小物雑貨を店頭に並べてキャラクターを育ててきましたが、それでは十分でなくなりました。最近はキャラクターとのタッチポイント(顧客接点)が増えています。LINEのスタンプもそうですし、SNSには数分の動画もあれば、30秒の動画もある。またクレーンゲームで最初に触れる人も増えています。

佐藤 娘のためにクレーンゲームに“投資”している親はたくさんいます。昔はクレーンゲームの商品はまがいものが多かったですが、いまはきちんとライセンスを取り、そこでしか手に入らない品物になっている。

 最近は外国人旅行者がクレーンゲームをするんですよね。こうしたタッチポイントも見極めながら、キャラクターの展開を考えていくことが大事です。

佐藤 そうなると、新しいキャラクターの作り方も変わってきますね。

 ええ、いままではデザインを作ってから、このキャラクターをどう展開していくかを決めていたのですが、いまはこのくらいの市場規模でどんな層にヒットしてほしいか、そのためにはどんな性格のキャラクターが妥当かを決めて、そこからこんなデザインがいい、というような逆算式のプロセスになっています。

佐藤 新しい作り方で、どんなキャラクターが誕生しましたか。

 最近だと「はなまるおばけ」ですね。デビューする新キャラクターを一般投票で決める「NEXT KAWAII PROJECT」で1位になったキャラクターです。コンペ形式でしたので、これは先にデザインがあり、いくつかのキャラクターから選んでいただく形でしたが、それぞれ市場規模やターゲットを絞って作り込んでいる。ここで選出されると、X(旧ツイッター)のフォロワー数、約10万人の後押しを先に得てから、グッズ化を始めるといったことができます。キャラクター作りのスピード感やヒット打率が圧倒的に変わります。

佐藤 その中から第二のハローキティが生まれてくるかもしれないですね。

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