笑顔をつなげるグローバルエンターテイメント企業へ――辻 朋邦(サンリオ社長)【佐藤優の頂上対決】

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ストーリー性がない強み

 私はキャラクターには2種類のパターンがあると考えています。ハローキティのように長く愛されるキャラクターと、一気に盛り上がって少しずつ落ちていくキャラクターです。後者はアニメやゲームに多い。

佐藤 例えば「鬼滅の刃」のキャラクターたちですね。3年前の爆発的なヒットのままでは続かない。

 私どもはその両方をやっていこうと考えています。その中で爆発的な人気を博したものが、長く続いていくキャラクターになるかもしれません。

佐藤 私は外務省時代、モスクワに駐在していましたが、社会主義のソ連では知的所有権が整備されていなかったこともあり、キャラクターが育ちませんでした。1980年のモスクワ五輪では大きな予算を投じて「ミーシャ」という熊のキャラクターを作りましたが、まったく定着しなかった。その一方で『ワニのゲーナ』という絵本に出てくる「チェブラーシカ」というサブキャラクターが人気を博し、アニメ化もされましたし、2004年のアテネ五輪以降、ロシア代表選手団のマスコットにもなったんですね。

 仕掛けようとしてもなかなかうまくいかないのはよくわかります。私どものキャラクターの特徴の一つは、ストーリー性がないことだと思います。それはいい部分も悪い部分もありますが、人それぞれのハローキティが生まれる。ハローキティが友達だったり、同僚だったり、あるいはリーダーであってもいいわけです。

佐藤 なるほど、物語性のない強さがある。物語性がないなら、あらゆるものを包摂できます。そこは仏教的な「空」につながる気もします。長期間にわたって愛される最大の理由は、そこにあるのかもしれませんね。

 そうですね。お客様がどう思うかで、人それぞれのハローキティがあっていいと思うんです。

佐藤 たぶんそうした物語性のないキャラクターは、ディズニーには作れないでしょう。辻社長はライバル企業をどこだと考えていますか。

 実のところ、ライバルと捉えている企業はないんです。文具メーカーやおもちゃメーカーと競合する部分はありますが、ライセンスビジネスをここまで手広くやっているところはありません。海外ならディズニーさんがいますが、その事業領域は広いですし、ライバルではなく、その世界観を参考にさせていただいている感じですね。

佐藤 現在、乳幼児英語教材事業にも進出されているようですが、「グローバルエンターテイメント企業」を掲げていますね。

 サンリオといえば、ハローキティの会社、キャラクターの会社という認識で、海外ではまだサンリオの名前をご存知ない方も多いのですが、エンターテイメントの会社と呼ばれたいんですね。

佐藤 サンリオの考えるエンターテイメントとは、どんなものですか。

 人を笑顔にするモノ、コトすべてがエンターテイメントだと、とらえています。人の生活時間――通勤時間、食事の時間、お風呂の時間など、ありとあらゆる時間を笑顔に変えていく。教育もその一つで、幼児への最初の教育で笑顔を届けることができたらと考えています。そしてその笑顔と笑顔をつなげることで、私どもの企業理念である「みんななかよく」を達成していけるのではないか、そう思っています。

辻 朋邦(つじともくに) サンリオ社長
1988年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒。大手食品メーカーに勤務するが、父・邦彦副社長の急逝で2014年サンリオ入社。経理部、企画営業本部担当執行役員(ライセンス担当)などを経て、16年取締役、17年専務取締役。20年に創業者の祖父信太郎氏より60年ぶりに社長を引き継いだ。

週刊新潮 2023年12月7日号掲載

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