笑顔をつなげるグローバルエンターテイメント企業へ――辻 朋邦(サンリオ社長)【佐藤優の頂上対決】

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役員、管理職の入れ替え

 それで中期経営計画を作るにあたって、まず社員全員にアンケート調査をしました。われわれのどういう部分が弱いのか、社員と目線を合わせてから、組織風土の改革に乗り出した。そして次に行ったのは、人事です。やはり凝り固まっている制度や組織を変えるには、人を替えないといけない。そこで役員クラスから管理職クラスまで、外部から人員を招聘(しょうへい)しました。

佐藤 何人くらいですか。

 役員でいえば、常務執行役員3名、社外取締役3名を登用しました。さらに執行役員や部長クラスも含めると、十数人規模の入れ替えです。これにより改革前と現在を比較すると平均65歳だった取締役は52歳に、執行役員クラスでは54歳が51歳に若返りました。

佐藤 かなり大きな変化ですね。外部人材はどこから見つけてこられたのですか。

 人材紹介会社に頼んだりもしましたが、常務の二人はもともと一つ前の中期経営計画を一緒に作ったコンサルティング会社から来ていただきました。もう一人の常務は社内の人からの紹介です。

佐藤 コンサルは難関だし、高給でやりがいのある仕事です。どのように口説いたのですか。

 単純に一緒にやりたい、ということですね。それまで中期経営計画を作っていく過程で、考え方が自分と合っていると感じていましたし、課題も共有していましたから、彼らにしてもこの会社の未来が見えていたはずです。それを一緒に作り上げていくのも楽しい仕事であると判断してくれたのではないかと思います。

佐藤 管理職以上を外から呼んでくると、社内が大変ではなかったですか。本来なら自分があのポストに行くはずだった、と思った人もいたでしょう。私の外務省時代の経験からすると、1人抜てきすると3、4人が不満を持つ。

 そこは私も不安でした。しかもサンリオには外部の人を入れる文化がなかったんですね。一度、2018年くらいに外から1人だけ人を招いたんですが、改革担当が1人では協力者を得られにくく、私のミスでうまくいかなかった。

佐藤 組織ごとに免疫系がありますから、少ないと排除されてしまう。

 その失敗があったので、大きな変革をやる時には思い切った手を打たなければダメだと思いました。

佐藤 作戦において、人員の逐次投入は悪手です。

 ええ、だから一気に変えました。その上で全社員と1対4の面談をして、自分の思いやサンリオの未来について直接語りかけてきました。

佐藤 どのくらいかかりましたか。

 約1年半ですね。それを年代別にやりました。長年勤めてこられたプロパーの方は、急に改革だと言われても困るだろうと思ったのですが、違いました。20代、30代はこれまでの会社のやり方に不安を覚えていたり、改革の意義を分かってくれたりと、そこは予想通りでしたが、40代、50代の方も、もう時代が変わったので一緒に改革しましょう、自分がサンリオにいる間にそれができてうれしい、という反応だったんです。そこはサンリオの良さというか、祖父が作り上げてきた組織の強さを感じましたね。

佐藤 その効果が早々に出たわけですね。

 ある程度、課題ははっきりしていました。例えば、手を入れにくかった物販事業なら、年に5千点あったアイテムを2千点台まで減らす、という目標を立てた。

佐藤 年に5千点なら、月に400点以上、新製品が出ていたということですか。

 はい。そんなに新商品が出てもお客さんは見ることができないですよね。しかも売れないと廃棄することになる。社長になってからその現場を見に行きましたが、やはりいろいろなキャラクターのついた商品が、封も切られずに廃棄されていくのは悲しかったです。

佐藤 いわば自分の分身ですものね。

 そこで、私どものお客さんは1カ月に何度来るかとか、どんなものを買っていくかというデータを取って、適正な商品数、アイテム数を導き出しました。在庫を持つ業界は廃棄がないということは考えられませんが、環境への問題もありますし、そこを極小化しなければならない。売り上げのトップライン(営業収益)が伸びてきたので、現在のアイテム数は2900ほどですが、これにより長らく赤字だった国内物販事業は黒字化しました。

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