暗殺作戦で目、腕、家族を失った「ハマス軍事司令官」はどんな人物? 「デジタル機器を持たず、人前に姿を見せない」

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居続けない「ゲスト」

 イスラエルが血眼になって追う「見えない司令官」は、1965年にガザ地区南部の難民キャンプで生まれたという。

「87年の第1次インティファーダ(民衆蜂起)の際にハマス運動に加わり、90年代に仲間とカッサム旅団を立ち上げます。2001年にはイスラエルが初めて暗殺を試みたものの失敗し、その後もミサイルで狙われながら一命をとりとめてきました。ハマスでは、ガザの地下に網の目のように張り巡らされた全長500キロとされるトンネルの開発を担ってきたといわれています」(前出・外信部デスク)

 06年の暗殺計画ではミサイルが居所に命中し、片目と腕の一部を失い、脚にも重傷を負ったという。

「14年にはイスラエルの戦闘機に1トン爆弾を投下され、当時27歳だった妻と3歳の娘、7カ月の息子を一度に失ったとされている。今回の攻撃でも、兄など親族を亡くしたと報じられています」(同)

 復讐心が人後に落ちないはずである。

「通称のデイフとはアラビア語で『ゲスト』の意味。常に居場所を変えていることから名づけられたといいます。またビン・ラディンと同じく、彼も一切のデジタル機器を携行していないといわれており、イスラエルの情報解析が難航するおそれもあります」(同)

ガザでは英雄視

 国際ジャーナリストの山田敏弘氏は、

「デイフは96年にイスラエルで大規模な爆破テロを起こし、指名手配ナンバーワンとなっていますが、ガザでは英雄視されています。妻との死別後は中国人と結婚した、あるいはイランに滞在していたといった情報もあります」

 とした上で、今後の本格的地上戦について、

「カッサム旅団内には『ヌフバ』という特殊部隊があり、今回はその1500人ともいわれる戦闘員が攻撃に参加しました。対してイスラエルは“ヌフバを全滅させるまでは攻撃をやめない”と公言しています」(同)

 先の黒井氏も、

「これまでのハマスはさほど力がなく、ある程度弱体化させた時点でイスラエル軍も引き揚げていましたが、今回は大規模に越境攻撃する能力を証明したので、壊滅させなければ危険だとイスラエル側は考えています。それで空爆でたたいた後、地上部隊が多方向から侵攻してガザ市の包囲に入っているのです。今後は市内制圧ですが、ハマスの激しい抵抗が予想され、熾烈(しれつ)な市街戦になります。戦いは長期化すると思われます」

 痛ましくも連日、犠牲者の数が更新されていくのだ。

週刊新潮 2023年11月9日号掲載

ワイド特集「戦争論」より

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