「行動変容」を促す治療アプリで医療を変える――佐竹晃太(CureApp代表取締役社長・医師)【佐藤優の頂上対決】

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次は「減酒治療アプリ」

佐藤 会社はいま、どのくらいの規模になりましたか。

佐竹 従業員は200人を超えました。昨年、二つ目の高血圧向け治療アプリの販売が始まりましたので、これを社会に浸透させることに重きを置いた活動やビジネスサイドの人材採用を行っています。

佐藤 佐竹さんの他に何人も医師がいるそうですね。

佐竹 11人います。これはたぶん、普通の製薬会社と比べても多いんじゃないかと思います。

佐藤 エンジニアはどうですか。

佐竹 数十人という感じです。

佐藤 IT関係のエンジニアは慢性的な人材不足ですが、どう集めているのですか。

佐竹 エンジニアには独特のコミュニティーがあるんですね。そこで情報交換がなされ、素晴らしい技術を持っている会社とか、新しい技術的取り組みをする会社に集まってくる。また、魅力的なエンジニアがいる会社にもやってきます。弊社には強いエンジニアが何人かいて、彼らが引っ張ってくれる。それが武器になっていると思います。

佐藤 それは通訳の世界と似ていますね。独特のコミュニティーがあって、強力な通訳のまわりには人が集まってきます。

佐竹 そうなのですね。

佐藤 今後は、どんな疾患のアプリを開発されていくのですか。

佐竹 三つ目は、減酒ですね。いまちょうど飲酒量を減らす治療アプリの治験を行っているところです。もちろんこれも治験を終えたら薬事承認のプロセスに乗せます。

佐藤 これも裾野が広そうですね。

佐竹 それからNASHと呼ばれる肝臓の生活習慣病の治療アプリも開発中です。

佐藤 脂肪肝ですか。

佐竹 ええ、脂肪肝が重症化したものです。また、乳がんの治療アプリも開発中です。これは少し性格が違っていて、抗がん剤とセットにして使う副作用マネジメントなどが中心となります。さらに慢性心不全、慢性腰痛症の治療アプリも開発しています。

佐藤 薬の使用量が減っていくわけですから、製薬会社と競合することになりますね。

佐竹 確かにそういう面はありますが、一方で製薬会社でも治療アプリを新規事業として始めるところが5、6社出てきています。彼らと競争する部分もあると思いますし、共存していく部分もあるでしょう。弊社はスタートアップとして、人とテクノロジーを武器に、彼らとしっかり対峙していきたいですね。

佐藤 治療アプリ市場は急速に大きくなっていく気がします。CureAppはその担い手として、数年後には誰でも知っている会社になっているのではないでしょうか。

佐竹 そうありたいです。100年ほど前に抗生物質のペニシリンが発見されました。これがさまざまな感染症に効くと分かり、そこから次々に薬が誕生した。現在は、その時と同じような状況が生まれているのだと思います。治療アプリは、多様な可能性を秘めています。今後、治療アプリを使ったスマート療法が治療の標準になっていくと、私は確信しています。

佐竹晃太(さたけこうた) CureApp代表取締役社長・医師
1982年神奈川県生まれ。慶應義塾大学医学部卒。北見赤十字病院、日赤医療センターを経て、2012年上海中欧国際工商学院、翌年ジョンズ・ホプキンス大学に留学し、MBA、公衆衛生学修士を取得。14年CureApp(キュア・アップ)を設立、20年に日本で初めて治療アプリで薬事承認を得る。本年、経産省の「日本スタートアップ大賞」審査委員会特別賞受賞。

週刊新潮 2023年10月12日号掲載

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