【袴田事件再審】同級生が証言する巖さんの少年時代 「逮捕されたのを知って仰天した。あんな温厚な男が…」

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 今年7月、袴田事件弁護団の事務局長・小川秀世弁護士は「警察は袴田さんが犯人ではないことを知りながら、真犯人を逃がすために証拠捏造を繰り返したのです」と初めて事件の“核心”を口にした。「捏造」を否定しようと再審の準備を進める検察だが、袴田巖さんは既に87歳である。この夏、筆者は、巖さんの同級生たちを訪ねた。【粟野仁雄/ジャーナリスト】

ひで子さんは「頑張ります」

 7月25日、日本外国特派員協会(東京・千代田区)で巖さんの姉・ひで子さん(90)と袴田事件弁護団の事務局長・小川弁護士の会見が行われ、海外メディアの記者から鋭い質問が出た。

 司会はフランスのリベラシオン紙やラジオ局の記者を経て現在はフリージャーナリストの西村カリン氏。彼女は昔の裁判長が持つような槌を持参して机を叩いて会場を和ませてから、会見が始まった。

 冒頭、ひで子さんは「57年間、戦ってようやく再審開始となりました。外国の人からも応援していただき本当にありがとうございます。まだ裁判は終わっていませんが、頑張ります」と挨拶した。

 続いて小川氏は「(2014年、静岡地裁の)再審開始を取り消した(18年、東京高裁の)決定を取り消した最高裁は、差し戻し決定の中で『5点の衣類が味噌漬けされた証拠はない』としている。我々は再審公判を戦うが、検察は有罪立証をするという、法律上、証拠に基づかないことを主張することは許されないとして却下を求めてゆく」などと話した。

真犯人を逃がすための警察の捏造

 この日の小川氏は、これまでの再審(請求審)では主張してこなかった、以下のような新たな主張を展開した。

「この事件では、警察が袴田さんは真犯人ではないことを知りながら、真犯人を逃がすために捏造を繰り返したひどい事件である」

 何度も記者会見をしてきた小川氏だが、「捏造」についてこれだけ直截な表現をするのは珍しい。再審無罪となった有名な殺人事件で、真犯人が判明したケースはほとんどない。

 捜査機関は何のために、そこまでの捏造をしたのか。推測の域を出ないが、「こがね味噌」の橋本専務一家を惨殺した一味に、静岡県警と繋がりの深い人物が存在し、その人物を警察が守ろうとした可能性が高いと言われている。

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