【大川原化工機冤罪事件】東京地検は立件できたのに取り下げてやったの態度、捜査員は財務諸表の読み方も分かっていなかった感じ…現役社員が証言する“杜撰すぎる捜査”

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起訴取り消しを予見した弁護士に驚き

 取締役の初沢さんも、警視庁から取り調べを受けた社員の1人だ。

「警視庁は、逮捕した3人が噴霧乾燥機が輸出貿易管理令に該当しているのに『非該当で行く』と共謀していたという筋書きだったのでしょうけど、そんなことが会議で話題になったことなんて一度もないですよ」(初沢さん)

 また「私を担当していた捜査官は、どうも財務諸表の読み方もよくわかっていないんじゃないかなという印象を持ちました」と振り返る。

 初沢さんも大川原社長の右腕として任意聴取が続けられたが、経営判断は社長ら3人にしかできなかった。

「任意聴取を1年半もダラダラやっていたけど、決め手もなかったようだし、これは逮捕なんてないだろうと思っていました。ところが……。逮捕の日のことはもう思い出せないほどですね。無実ですので裁判では負けないだろうと思っていましたが、とにかく会社を守らなくてはいけなかった」(同)

 最後は実験がポイントだった。起訴後、高田弁護士は4つのシナリオを持っていたという。

「【1】起訴取り消し、【2】無罪、【3】有罪で執行猶予、【4】有罪で実刑。驚くことに、高田さんは一番に起訴取り消しを持ってきていたのです。普通は無罪を一番にしますよね」(同)

 起訴取り消しなど滅多にあるものではない。それを高田弁護士は最も可能性が高いと考えた。卓見だった。

「東京地検は初公判の直前に起訴を取り消しました。冒頭陳述書ができないということでした」(同)

 取材に来たメディアには努めて丁寧に応対した。

「うちの主張をわかってもらうようにしたつもりです。過去にマスコミ対応に失敗して評判を落とした会社をいくつか見てきましたから」(同)

記述を削除させた警察白書

 警察庁は起訴取り消しから約2年が経った今年7月6日、ホームページでも公表している警察白書などで、この事件を取り上げていた部分を削除した。同庁は「起訴取り消しや関係者の削除要請を踏まえ対応を検討していた。事件が報道などで改めて話題になったことも考慮した」と説明した。2021年版の警察白書で、不正輸出対策の具体例として概要を記載したままだった。

 実は相嶋さんの長男が、警察白書に不正輸出の事例として残されているのをいち早く見つけて抗議していたのだ。そのままでは後世にも大川原化工機の不正輸出があったということにされてしまう。放置されることはもちろん間違いだが、全面削除もある意味、ごまかしである。起訴を取り消したことを残すべきだろう。

 今年7月、この経緯を東京新聞の望月衣塑子記者に質問された松野博一官房長官は「係争中の事案につきコメントは差し控える」とした。

 初沢さんは「起訴取り消しではっきりと冤罪とわかっているはず。民事裁判があるからといってコメントしないのはおかしいでしょ」と話した。

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