【大川原化工機冤罪事件】東京地検は立件できたのに取り下げてやったの態度、捜査員は財務諸表の読み方も分かっていなかった感じ…現役社員が証言する“杜撰すぎる捜査”

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「取り下げてやったんだ」の態度

 2021年8月4日に予定されていた初公判4日前の7月30日、東京地検から高田弁護士に異例の起訴取り消しの連絡があった。

 初沢さんにもすぐその知らせが入り、「まずは無罪だったということでほっとしました」。懇意にしていたお客さんも「よかった」と言ってくれた。

「でも、東京地検には、詫びるどころか『本当は立件できたのに取り下げてやったんだ』というような傲慢な雰囲気を感じましたね。社長も怒っていました。その後、民事訴訟を起こす話が出てきたので、私も『ぜひ戦ってください』と社長に強く訴えました」(同)

 相嶋さんの遺族が大川原社長らとともに、東京都(警視庁)と国(検察庁)に対して総額約5億6000万円の損害賠償請求を起こした。Iさんは裁判をすべて傍聴した。そして6月30日になる。

「4人の現職警官が証言する日でした。前の週に安積(伸介)警部補が島田さんの証言と食い違う証言ばかりしていたので、また警視庁の証言者がどう言って逃げようとするのかなと見守っていました」(同)

 濱崎賢太、時友仁の2人の警部補が高田弁護士の尋問に捜査が捏造だったことを明確に認め、その動機を「上司らの出世欲だった」とまで打ち明けた。

 Iさんは2人の告白についてこう話す。

「びっくりしましたよ。はっきりと捏造と言ったのですから。逃げ切れないと思ったのでしょうか。そこまでの裁判で桃崎剛裁判長は、警視庁側が証拠開示をまったくしないので不快感を持っていたようでした。裁判長が『欲とは何ですか?』とまで畳みかけて訊いたのは面白かったですね。これで勝ったなと思いました。けれど、正直に話してくれた2人は現職の警官です。今後、警察内部で不利益を被らないか心配になりましたよ」

1人も辞めなかった社員

 激減していた受注も今は回復した。

「外為法の改正後も、噴霧乾燥機の輸出では一社を除いて事前申請などしていなかった。わが社のように粉体を扱う会社は、逮捕報道後、法令などを調べ直していました。ライバル社もうちに問い合わせてきましたね。今後は同業社とも情報共有していかなくてはならないと感じました」(Iさん)

 かけがいのない上司を失ったIさんだったが、嬉しいこともあった。

「この事件で退職した社員は1人もいなかったのです。全員で戦おうと団結しましたね」

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