【大川原化工機冤罪事件】東京地検は立件できたのに取り下げてやったの態度、捜査員は財務諸表の読み方も分かっていなかった感じ…現役社員が証言する“杜撰すぎる捜査”

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まさかの社長らの逮捕

 警視庁は「熱風殺菌で装置の内部がすべて100度以上になり完全滅菌できる→作業者が安全に扱えるので生物兵器製造に転用できる→外為法に違反する不正輸出になる」との論法だった。

 Iさんは静岡県富士宮市にある同社の研究所で試験業務を行った経験があり、機械の仕組みには詳しい。

「問題になった噴霧乾燥機は測定口のあたりも温度が上がりにくいということも、フローシートで説明しました。相手は一応、聞く耳は持ってくれていましたけど……」(同)

 その後、半年ほど任意調査が続くが、大川原社長や島田さんほど頻繁ではなかった。

「いつまでも社長らの取り調べが続くので、何かミスがあって書類送検でもされるのかなと思っていましたが、社長らが逮捕されるなんて想像もしなかった」(同)

 2020年3月11日、まさかの3人の逮捕だった。

「あの日は、富士宮の研究所へ車で向かっていました。(東名高速)足柄サービスエリアで社員からのメールを見て逮捕の情報を知り、驚いて横浜へ引き返した。会社は騒然としていました。NHKの取材も来て盛んに会社を映しました」

 その後は毎朝、執行役員や部責らが集まって今後の対応を協議した。トップの代理となる専務は、大川原社長の息子の知尚さんだった。

「拘束された3人に会いに行こうとしましたが、完全に接見禁止で、顧問弁護士の高田(剛)さんを通じて、雑誌などの差し入れ品を渡してもらっていました」(同)

受注は半減

 取引先は逮捕報道に敏感に反応した。

「『もうおたくとは取引しません』とはっきり言ってくるところもありましたし、何も言わず自然に去っていったところも。辛い日々でした。それでも他社に発注を切り替えようとしていた大手企業の本社担当に懸命に説明したら、『それなら問題はないですね』と戻ってくれたところもありました」(同)

 苦境の中、嬉しいこともあったが、それでも国内向けに年間20億円くらいあった受注が2020年は10億円に激減。「会社が潰れてしまうんではないかと不安が襲っていました」とIさんは振り返る。

 そんな中、大川原社長らの刑事裁判が始まろうとしていた。

「高田弁護士は『刑事裁判になっても勝てないことはない』と言っており、無罪になると思っていました。私も富士宮市の研究所での実験に立ち会い、うちの噴霧乾燥機が完全殺菌などできないことがわかっていましたので、勝てるという感触は持っていました」(同)

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