【日大アメフト部違法薬物事件】元凶は“保体審(ホタイシン)” OBは「半世紀以上前から問題視されていた。解散しかない」

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体質は変わらない

 かねてより一部の日大関係者の間で話題となっている書籍がある。中塚貴志・著『日大 悪の群像』(創林社、1984年)だ。書名からして凄まじいが、父兄会の会長として日大改革を叫び、経営陣と15年間にわたって戦い続けてきた著者による記録である。人物名はすべて実名で、総長選の内幕から裏口入学の実態まで、具体的なデータをあげながら克明に記されている。日大の腐敗ぶりを告発する本は数多く出てきたが、そのなかでも“名作”との評価があるそうだ。

「私が著者の中塚貴志さんと初めて会ったのは、1980年代半ばだったと思います」

 と語るのは、先の古参ジャーナリストB氏である。

「知り合いだった環境問題評論家の船瀬俊介氏が新宿区長選に出馬するというので、その決起集会に行ったら、主賓が中塚さんだったのです」

 船瀬氏といえば、『買ってはいけない化粧品』や『ほんものの日本酒を!』などの著書で知られる反体制派の評論家である。

「そんな人物の出馬応援に、白髭に杖をついたハカマ姿で、どう見ても右翼の国士みたいな老人が来ているので、妙だなと思いました。すると中塚さんは、こう挨拶したんです。『私はこの船瀬君とは思想も哲学も異にする者である! だが彼は、ひとつの方向性をひたすら追って一向にぶれない! 私も長年、日大改革にまい進してきた身として、彼の姿勢には強く共感を覚えている!』と。言うまでもなく船瀬氏は泡沫候補で落選するのですが、そんな人物の応援に駆けつけるとは面白い老人だと思い、後日、話を聞きに行きました」(B氏)

 そこでB氏は、ある“告発状”の写しを見せられた。

「それは1978年に中塚さんたち父兄会幹部が連名で出した、当時の日大総長兼理事長の鈴木勝氏に宛てた“退陣勧告状”でした。読み始めたら、放火だの焼身自殺だのリンチ殺人だの、日大内での驚くべき不祥事が事細かに書かれている。そのほか理事たちへの不可解な報酬についても暴かれていました。これが本当に最高学府での話なのか。中でも驚いたのは保体審の事務部門関連の記述です」(B氏)

 その“退陣勧告状”の全文が『日大 悪の群像』に転載されている。B氏が言う保体審関連の部分はこうだ。

《日本大学本部に「保健体育事務局」という機関がある。言うまでもなく保健体育は大学の教科の中では必須科目であり、「保健体育事務局」は日大十三学部の保健体育指導の総元締である。この責任者で現事務局のNという人物(註:本文は実名)は自からの小指を第二関節から切断していると言われている。自ら小指を切り落とすことを俗に“エンコ詰”といい、暴力団かテキ屋の社会のみでまま行われる風習である。このような人物が大学本部の幹部職員で、貴殿の側近中の側近といわれていることは、いかに高邁な教育理念を口にし、教学優位を説いてみても泥棒の説教とおなじで滑稽としかいいようがない。/頻発する多くの暴力事件は、それを肯定する日大の体質によるものである。》(本文ママ)

 前出のOB職員A氏はこう述べる。

「この本は私も以前に読みました。この退陣勧告状の末尾にあるように、日大にはこういう体質が大昔からあるんです。体質とは血液型みたいなものですから、外面だけすげ替えてもそう簡単には変わりません。誰が理事長になろうと、どれだけ女性理事を増やそうと、体質を変えないかぎり同じ問題が続くことは今回の違法薬物事件で明らかです。結局、旧保体審的な連中がいまでも仕切っているから、今回もフェニックスがすぐに連盟に復帰したいと厚顔無恥な主張をしたり、警視庁の要請を無視するかのような振る舞いをするんです。こんな連中にコーチや監督の資格はありませんよ」

 ではどうすれば変わるのか。

「やはり保体審(現・競技スポーツ部)を完全解散し、フェニックスも廃部にする。活動停止なんて生易しい処分では意味がありません。悪い血が全部抜けきったところで、前任者を入れずにまったく新しい人たちによってゼロから作り直していく、それしかないと思います」

 そんなことができるとは、とても思えませんが――A氏は最後にそう呟いた。

デイリー新潮編集部

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