【男子バスケ五輪出場】トム・ホーバス監督が語った「私があえて日本語で指導する」理由

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「最高だな」と思いながらみんながプレー

 金メダルの他にもう一つ、オリンピックで目指していた目標があります。それは、日本のバスケが世界の女子バスケのスタンダードになることです。日本のバスケは動きも速いし、パスもよく回すし、スリーポイントシュートもよく決めるし、すごく面白いと思います。他の国のコーチたちと話していても「日本のバスケは観ていて面白いし素晴らしい」と必ず言われますよ。1点差で勝った準々決勝のベルギー戦の最中も「これに勝ったら絶対あと2試合あるんですよ! うちのバスケを世界に見せるんでしょ! みんなしたかったことでしょ!」と言っていました。うちのバスケは本当に楽しいです。「最高だな」と思いながらみんなプレーしていますよ。間違いなくうちがベストチームです。

〈アメリカ出身のホーバス監督の指導法の最大の特徴は、いつ何時も通訳を介さず、日本語で選手たちに話すことである。本誌(「週刊新潮」)連載「夏裘冬扇」で片山杜秀氏はこう評している。

《真に力強い日本語を久々に聴いた。東京五輪を実況するテレビから聴こえて来たその激烈さと言ったら!

「ディフェンスの方がきついと思うよ。何でそのプレッシャーに負けるの! 何で頭つかってないの、最後まで! 真ん中にクラッシュして、ボール強くもって、カッティングして、相手にファウルさせるしかないじゃないですか!」

 女子バスケットボールの準決勝。日本対フランス。日本がリードして終盤。が、守りに入り、敵に気後れし、追い上げられ始めた。そこで監督(正式な役職名はヘッド・コーチ)が、選手を集めてこう演説したのだ。これぞ指導者の言葉だ。素晴らしい日本語だ。心を射抜かれた》〉

 フランス戦の際は、終盤でベンチメンバーを使ったのですが、エナジーが全然足りていませんでした。確か、24点差ほどで勝っていたのに、急に15点差までつめられて、「気持ちで負けてるよ! どうして頭使ってないの! スペーシングもうまく使ってない!」と怒りました。こういった言葉は、試合中に自然と出てきます。私は熱い人間ですから、止まらないのです。

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