ベビーオイルを塗った手で被害女性の額に十字を書き…性的暴行で起訴された「出所者支援NPO法人」前理事長のトンデモ“除霊”行為

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「犯罪をした人が一番悪いです。しかし、彼らも同じ『人間』なのです」

 相談者の女性に「悪霊が憑いている、除霊しないといけない」などと言って性的暴行を加えたとして、準強制性交等の罪に問われているNPO団体元理事長の初公判が9月1日に東京地裁(野村賢裁判長)で開かれた。元理事長は黙秘している。【高橋ユキ/ノンフィクションライター】

 ジャージ姿にマスクをつけ、法廷奥のドアから姿を現した五十嵐弘志被告(59)は、受刑者や出所者等の社会復帰支援を行うNPO団体「マザーハウス」の理事長だった。自身も元受刑者である被告が2012年に立ち上げた団体だ。これまでメディアにもたびたび登場し、法務省が主唱する「社会を明るくする運動」の講演では「犯罪や非行をした人はみなさんと同じ『社会』の中で生きていきます。犯罪をした人が一番悪いです。しかし、彼らも同じ『人間』なのです」と出所者が社会で生きることへの理解を訴えてきた。

 別の講演会では「刑務所での様々な触れ合いの中でマザー・テレサの本と出会い『目の前の人を愛する事』を教えて頂き、自分で門戸を叩きキリスト教カトリックの信徒になりました」とも語っている。

 味方の少ない受刑者や出所者に、自ら寄り添い奮闘してきた五十嵐被告。だが検察官は、そんな被告が、これまで自身が支援してきたような“罪を犯し味方のいなくなった”女性に対して加害に及んだと見ている。

 この日の公判で検察官は、五十嵐被告が相談者の女性に“除霊”と称し言葉巧みに性的暴行に至っていたと主張。また、女性には当時、五十嵐被告や「マザーハウス」以外に、頼れるものがなく、断ることが困難な状況であり、五十嵐被告はそれを認識していたとも主張していた。

「精油を塗って除霊しなければならない」

 冒頭陳述などによれば、被害者は実母への傷害事件で執行猶予判決を受けたAさん(被害当時25)。彼女は昨年11月に事件を起こして逮捕され、起訴後に宇都宮地裁で裁判が開かれていた。当時、Aさんの実母は“娘への恐怖感を抱いており、もし執行猶予判決を受け釈放されても同居は難しい”という意志を示していた。だがAさんには実母以外、頼れる人がいない。そのためAさんの弁護人が、五十嵐被告に“Aさんの社会復帰後の支援”を依頼し、五十嵐被告は了承した。

 五十嵐被告は「マザーハウス」理事長としてAさんの裁判にも証人出廷し、支援を約束したという。そして今年5月10日の判決。Aさんには執行猶予付きの有罪判決が言い渡され、その日に拘置所を出た。Aさんの実母や弁護人、「マザーハウス」スタッフらとともに、五十嵐被告も拘置所まで迎えに行ったそうだ。Aさんは実母から「これからは五十嵐さんを頼るように」と言われ、「マザーハウス」が管理する賃貸アパートの一室に身を寄せ、生活保護を受給することになった。事件はその日の夜に起こったと検察官は主張する。

 引き続き冒頭陳述によれば、五十嵐被告はAさんとともに車で量販店に行き、Aさんの新生活のための布団一式、ドラッグストアで“ベビーオイル”を買った。その後、車内でこう告げたという。

「悪霊がついているので精油を塗って除霊しなければならない」

 車でアパートに戻ると、五十嵐被告もAさんとともに部屋に入ってきた。

「部屋まで入ってきたことに疑問を抱いたが、除霊と言っていたこと、ベビーオイルを買っていたことなどから、ここで除霊をやるのかもしれない」(冒頭陳述より)と思ったAさん。五十嵐被告はAさんを座らせて、ベビーオイルを塗った手で彼女の額に十字を書き、キリスト教の本を朗読。Aさんにも朗読させた。

 そして、Aさんを布団の上にうつぶせにさせ、その腰の上にまたがり、肩などをマッサージしながら、五十嵐被告はこう言ったという。

「相当強い悪霊が憑いているので体が硬くなっている」

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