「総理や政府には戦略的発想が出てこない」 佐藤正久元外務副大臣が防衛装備品の海外移転に関して徹底批判

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「政府が主導すべき重要案件なのに、その政府にまったく熱量が感じられない。岸田総理が言う“今日のウクライナを明日の日本にしてはいけない”との危機感はどこにいったのか」

 とは、自民党の佐藤正久元外務副大臣(62)だ。与党の国家安全保障戦略等に関する検討ワーキングチーム(WT)において、防衛装備品の海外移転に関する議論をリードする一人である。

 今年4月以来、自公両党は防衛装備品の輸出制限の緩和を議論してきた。昨年2月のロシアによるウクライナ侵攻以来、国際的な安全保障面での協力関係構築が重要視されているが、その作業は遅々として進まない。

「亡き安倍晋三元総理が指摘されたように、台湾有事はイコール日本有事。いざコトが起きた時、日本は燃料や弾薬などの支援を西側諸国に要請することになる。いま、わが国が戦禍に苦しむウクライナに何も提供できなければ、欧州各国も台湾有事の際に日本への積極支援などしてくれません。海外への防衛装備品の移転はわが国の安全保障と表裏一体の関係にあるんです」

「政府の意図が見えない」

 折しもNATO(北大西洋条約機構)が日本に連絡事務所の設置を検討したが、中国に配慮するフランスのマクロン大統領が反対を表明。計画は白紙化している。

「日本はNATOに加盟していませんし、地理的にも遠い。ある程度の拒否感はやむを得ません。ですから、オーストラリアやニュージーランド、フィリピンなどを包括する“インド太平洋地域の事務所”として設置を要望すべきでした。総理や政府には、そういう戦略的発想が出てこない。不思議で仕方がありません」

 佐藤氏は、7月5日のWTで配布された資料の文言についても疑義を呈する。

「そもそも、この議論はウクライナ侵攻をはじめ、これまでと格段に違った厳しい安全保障環境を念頭に始まった。しかし、5日の与党合意資料は〈示された論点については、今後、政府において検討のうえ、本チームに報告を求める〉となった。いつの間にか、党が政府に装備移転を求める格好になっており、政府の意図が見えません。本末転倒もいいところですよ」

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