シンガポールでは激減…中国人観光客が世界各地から消えている理由

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2023年上半期の訪日客数TOP3に入らなかった中国

 水際措置が緩和されたことにより、訪日外国人数が増加している。

 日本政府観光局(JNTO)の統計によると、今年上期の訪日外国人数は1071万2000人と、コロナ前(2019年上半期)との比較で約6割に回復した。6月だけの人数も207万3300人と、コロナが急拡大した2020年2月以降、3年5カ月ぶりに200万人を超えた。

 訪日外国人を国・地域別で見ると、最多は韓国の54万5100人。以下は台湾の38万9000人、米国の22万6800人と続くが、気になるのはコロナ前に最多だった中国が20万8500人と伸び悩んでいることだ。88万人を超えていた2019年6月に遠く及ばない。

 その要因として挙げられているのは、まず「航空便の回復の遅れ」だ。全日本空輸(ANA)の国際線全体の運航便数は、6月末時点でコロナ前の6割強の水準に戻ったが、中国路線は3割強にとどまっている。

 もう1つは「中国政府による訪日団体旅行の規制」だ。中国政府が日本への団体旅行の規制を解除する目途は立っておらず、今後も個人旅行頼みの状況が続きそうだ(7月19日付日本経済新聞)。

 これらの問題は徐々に改善されてきており、中国人観光客数は着実に増加するとの見方も出ているが、はたしてそうだろうか。

海外旅行への支出を躊躇している傾向も明らかに

 気がかりなのは、日本に先行して水際措置を緩和した東南アジア諸国に中国人観光客が期待したほど訪れていないことだ。7月10日付ブルームバーグによれば、5月に東南アジア5カ国を訪れた中国人の数は、2019年との比較で14~39%のレンジにとどまった。観光業への依存度が高いタイでも、今年の公式目標(700万人)を少なくとも200万人下回る見通しだ。

 シンガポールはさらにひどく、1~5月は31万901人で、2019年同期の155万人を大きく下回った。中国国内では、今年の夏の東南アジア向けツアー予約も上期から大きく改善していないという。

 中国人の観光熱がすっかり冷え込んでしまった感が強い。

 米コンサルティング企業オリバー・ワイマンが今年6月、中国本土在住の18歳以上を対象に調査を実施した。海外旅行経験者で「来年に海外旅行の計画がある」と答えた人の割合が24%だった一方、「2025年か2026年に海外旅行を再開する」と答えた人は59%にのぼった。また、海外旅行経験者の73%は「国内旅行に満足している」と回答している(7月17日NNA ASIA)。

 ゼロコロナ政策を解除した後の中国では、サービス業を中心にリベンジ消費(コロナ禍で余儀なくされた自粛生活の反動としての消費)が見られた。だが現在の高額消費は、先行き不安から盛り上がりに欠けている。海外旅行も同様の傾向にあると言えよう。

「爆買い」で知られた中国人が海外旅行への支出を躊躇するようになっているのだ。

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