涙ぐましい努力もSNS上には失望感が溢れ…中国共産党にとって真の脅威は若者の失業問題

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5月の若者失業率は20.8%で過去最高を更新

 中国経済の屋台骨を担う不動産業界の不振で国内の需要が低迷し、生産が伸び悩む状況が続いている。中国国家統計局が6月30日に発表した6月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.2となり、3カ月連続で好不調の境目である50を下回った。

 中国では工場の閉鎖や操業停止が相次いでおり、2億人規模の「農民工」(農村部からの出稼ぎ労働者)がリストラの憂き目に遭っている。

 中国労働者に関する香港拠点の情報サイト「中国労工通迅」によれば、今年1月から5月までに中国全土で起きたストライキの件数は140件に上り、同時期に313件のストが発生した2016年以来最多を記録した。実際の件数はその10倍以上だと言われている。

 農民工の不満の高まりは懸念材料だが、筆者は「中国の将来を担う若者の就業難の方がより大きな問題だ」と考えている。

 今年5月の若者(16歳から24歳)の失業率は20.8%と過去最高を更新した。今年度の大卒生(1158万人)の4月時点の就職内定率は50%前後にとどまっている(6月26日付JBPRESS)。大卒者は来年以降も増える状況にあり、若者の失業問題が年を追うごとに深刻になる可能性が高い。

 若者の失業問題は、中国の国力に悪影響を及ぼすリスクをはらんでいる。

 中国の大学生は安全志向を強めており、第1志望に国有企業を挙げた学生の割合は47%に達している。中国政府は企業に対して失業中の若者をインターンとして受け入れることを求めているが、その要請に応じる可能性が最も高いのは国有企業だ。高い教育を受けた若者が、最も生産効率が低いセクター(国有企業)に集中する傾向が強まっているのだが、これは中国経済の成長速度がさらに低下する可能性を意味している(6月6日付日本経済新聞)。

地方政府の雇用創出も限界に達している

 一方、中国の労働市場全体は既に人手不足の状態にある。経済の担い手である生産年齢人口(16~59歳)が2012年から減り始めている。

 中国政府は外国人を受け入れる方針を打ち出していないが、大都市に比べ労働力を確保しづらい地方では外国人労働者なしでやっていけなくなっている(5月8日付毎日新聞)。

 若者でも職業訓練を受け、実用的な技術を身につけていれば、雇用はいくらでもある。にもかかわらず、大卒者が就職難にあえいでいるのは、労働市場に極端なミスマッチが発生しているからだ。

 その原因は産業界のニーズを顧みることなく、大学の定員を長年拡大し続けてきたことにあるのだが、構造問題を解決するためには長い時間がかかる。

 中国政府は窮余の策として地方政府に対し、予算の許す限り多くの新卒者を採用するよう求めている。地方政府も雇用の創出に努めてきたが、限界に達している。

 コロナ対策関連支出が急拡大する一方、不動産市況の悪化で土地使用権の売却収入が激減し、地方政府自体が倒産の危機に直面しているからだ。

 地方政府が傘下に置く投資会社「融資平台(LGFV)」は、抱える債務が昨年末時点で59兆元(約1150兆円)に達している(6月15日付日本経済新聞)。

 地方政府の財政悪化で「LGFVが発行した債券のデフォルトが相次ぐ」との危機感が高まっており、中国最大級の国有銀行がLGFVに対して超長期(25年)の融資や一時的な利払い緩和策を提供する事態となっている(7月4日付ブルームバーグ)。

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