「女性であることをネガティブに捉えたことはない」 数々の人気番組を担当する舟崎彩乃が語るラジオ業界の舞台裏

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ベテランの場合はディレクターの手腕に左右されない?

――逆にベテランの方々の番組を担当するときはどんなお気持ちでしたか。

 めちゃくちゃビビります(笑)。ディレクターを担当しているところだと、オードリーさんや中川家さんがいらっしゃいます。でもお二組ともとても優しい方々ですし、ビビっていても何も進まないので、プレッシャーはあれどそこは割り切っています。それに、そもそもお二組ともトークが本当に面白く、彼らの喋りが番組を形作ってくれますから、ディレクターの手腕にはあまり左右されないのかも、とも思います。だから私の務めは、本人たちがモチベーションを保ったまま、話したいことを自由に話してもらうための環境を作りだすことなのかなと。事前に話す内容をすり合わせたりするよりは、何を話してくれるのだろう、とリスナーさんと一緒に楽しみにして、ブースの外に座っていますね。

 とはいえ、番組への向き合い方はまちまちです。先日まで担当していたぺこぱさんの「オールナイトニッポン0(ZERO)」では、放送作家さんとぺこぱさんのチームワークが素晴らしく、みんなで番組の内容を練っていました。また、いま担当している「乃木坂46のオールナイトニッポン」では放送前にしっかりと久保史緒里さん本人と打ち合わせをして、そのとき興味が引き出せそうな話題をいろいろと提案しています。例えば彼女は野球が大好きなので、そういったトークテーマをお願いすることが多いですね。ニッポン放送に入ってもらった後、1時間ほど打ち合わせをしたら、そのあとは写真を撮ったりたわいもない話をしたりして、リラックスして本番を迎えてもらえるように努めています。

すごいと思う2番組

――ディレクターとして、すごい、と思う番組はどんなものがありますか。

 すごいと思う番組ですか……。昼の番組だと、ADとして入っていた「高田文夫のラジオビバリー昼ズ」でしょうか。とにかく、パーソナリティーの高田先生の知識量がすごいんです。70代なのに今どきの話題にもあかるくて、もちろん落語の知識もとんでもない。どれだけ知識があるんだろうと思わせる引き出しの数なんです。コンプライアンスに厳しい今日、表現にもさまざまな配慮が求められる中で、ちょっと毒のある言い方で笑いを生み出してくれるのは、長寿番組ならではの強みだとも思います。ザ・お昼の番組という感じですね。

 夜の番組だと……やっぱりナインティナインさんの「オールナイトニッポン」はすごいですね。あの番組は、長い歴史の中で、ディレクターも、コーナーも、パーソナリティーの構成すら、大きく変わっています。それなのに、番組が見せてくれる「ナイナイらしさ」は変わりません。これは岡村さんと矢部さんの手腕はもちろんのこと、歴代のディレクターの力量も大きいと思います。また、あの番組では毎年、歌謡祭というイベントを開催しています。そのため、ディレクターは毎回の収録の構成に加え、そのひとつひとつをエピソードとしてストックし、イベントでそれらすべてを消化するような、俯瞰的な構成力が必要になります。1年を通して、ひとつのストーリーを作り上げるんですね。日々の番組の中で、そうした積み重ねをするのはとても難しいことだと思います。

 昼の番組と夜の番組では、ディレクターとして考えることは全く変わります。昼間の番組は、交通情報やニュースの枠があったり、やるべきことが決まっている。ゲストを迎えての番組展開が多いので、そうした応酬も踏まえた構成を考えます。一方、夜の番組は、レギュラーパーソナリティーのしゃべりがメインとなるので、自由にできる幅が広がる。特に「オールナイトニッポン」だとニッポン放送だけでなく全国の放送局で聞かれるようになるので、そういった意識は持つようになります。

 昼の番組にも夜の番組にもそれぞれの特徴があります。だからこそ、いろんな番組を担当できるのはすごく楽しいです。

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