「女性であることをネガティブに捉えたことはない」 数々の人気番組を担当する舟崎彩乃が語るラジオ業界の舞台裏
偶然の募集で
とはいえ、就活の時期になっても、どうやってラジオ業界に入ったらいいかは全くわかりませんでした。ネットなどで調べてみても、そこに載っているのは「はがき職人として名前を覚えてもらう」「出待ちで熱意を伝える」といった、すごくクラシックでアナログ的な方法ばかり。今でこそ就活サイトなどにも募集が出ているらしいのですが、私が学生だった頃は本当に暗中模索という状態でした。
そんなとき、運よく、通っていた大学にとあるラジオ制作会社の面接の案内が届いたんです。学校の講師に、たまたまその会社で勤めていたひとがいたらしく……。まさかそんな募集があるとは思っていなかったので、落ちてもいいからやってみるか、と楽な気持ちで応募しました。簡単な筆記試験と幾度かの面接がありましたが、音楽はなにが好きか、どんな趣味があるかなど、肩ひじ張らずに答えられる質問をされた覚えがあります。
そうして入社したのが、今いる会社の前身となる、サウンドマンという音響制作会社です。5年前にエル・ファクトリーという制作会社と合併して、ミックスゾーンという現在の社名になりました。入社したのが2015年だから、今年で入社9年目ですね。偶然に大学に募集があったから進んだ道で、それがなかったら、今はどうしているのだろうと不思議な気持ちになります。
音源を探しきれなくて、とちったことも
――ラジオ制作会社に就職されて、最初のお仕事は?
最初の1年は研修として、さまざまな番組のAD業務を任されました。未知の世界だったので、いったいなにをやるのだろうとドキドキしていたのですが……。つまるところ、なんでも屋なのだ、ということを知りました。パーソナリティーが番組中に飲むお水を用意したり、放送中に流すジングルを作ったり、その日に流す音楽の素材を探したり。テレビの世界だったら、それぞれが専門の職種に分かれて作業する仕事を、ラジオの世界ではADがまとめて行う印象です。
ラジオの放送中に作業することもあります。例えば、リスナーさんからのリクエストを受けて音楽を流す“リクエスト番組”では、必然的に生放送中に音源を探しに行くことになります。ニッポン放送はラジオ局の中でも充実したCDルームを完備しているので、目当てのものを見つけるのは一苦労。約17万枚のCDが収蔵されている10畳ほどの小部屋から、整理番号を頼りにその一枚を見つけなければいけません。実は一度、探しきれなくてとちってしまったことも……。
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