今さら独身女性の体外受精を認めても…中国の人口減に拍車をかける“若者の絶望的な状況”とは

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大都会の生活に燃え尽きた若者たちの“避難所”も話題に

 就職難にあえぐ若者たちは神頼みに走らざるを得なくなっている。

 5月5日付ロイターは「週末になると就職祈願のために訪れる、しょんぼりした姿の若者たちの長蛇の列が中国各地の寺でできている」と報じている。

 オンライン旅行代理店トリップ・ドット・コムによれば、年初来の寺院参拝者数は昨年比で310%増加した。参拝者の約半数が1990年以降に生まれた若者たちだ。

 注目すべきは、ストレス解消のためにお寺巡りをする若者たちが増えていることだ。

 瞑想など没入型のリラクゼーションが若者たちを魅了しており、中でも南西部にある都市・大理(だいり)は、大都会の生活に燃え尽きた若者たちの避難所となっている。その雰囲気が中国人の想像する 米カリフォルニア州に似ていることから、「ダリフォルニア」と呼ばれるようになっているという(5月24日付クーリエ・ジャポン)。

 若者が現実生活から逃避する動きを示しているのは、少子化対策にとって大きな障害だ。

 国内で禁じられている代理出産を、米国で行う中国人が増えていることも、気になるところだ。公式な統計はないが、中国人による米国での代理出産の数は、少なくとも年間数百件に上ると言われている(5月20日付ニューズウィーク日本版)。

 昨年10月以降、自国の将来に悲観した中国人がメキシコから米国に密入国を図る事案が急増しているが、その傾向が強いのは若者だ。このことにかんがみれば、自動的に米国籍が与えられる代理出産ベイビーの多くが米国内にとどまる可能性が高いだろう。

 日本の経験からわかるとおり、小手先の少子化対策では事態が全く改善しない。

 若者が将来に希望を持てる状況にしないかぎり、中国の少子化は日本を凌ぐ勢いで進んでしまうのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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