【叡王戦】藤井六冠が「指し直し2回」の末に菅井八段を破り防衛 印象深い5年前にもあった「千日手」の名対局

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1982年の名人戦では10局指したことも

 決着は深夜か未明になるかと思ったが、今回の指し直しの持ち時間は藤井が1時間、菅井は1時間6分だったため、早指しのようだった。再び相穴熊となった戦いは、藤井の反射神経が上回った。最後、藤井の王手「1五銀打ち」は「即詰み」。藤井らしい鋭い詰みが久しぶりに出た一局だった。

 勝った藤井は「全体を通して大変な戦いでした」などと話した。2人とも疲労がありありとわかり、とりわけ敗れた菅井は「1勝3敗では駄目。力不足でした」と悄然としていた。

 千日手で指し直しになることはそれほど珍しくはない。

 有名なケースでは、1982年に加藤一二三九段(83)が中原誠十六世名人(75)に挑んだ名人戦で、2局が千日手、1局が持将棋(双方入玉し勝負がつかない)の指し直しで、合計10局を指すという大激戦の末に、42歳だった加藤が悲願の名人を獲得した。名人戦では「羽生善治vs森内俊之」や「豊島将之(33)vs佐藤天彦(35)」でも千日手による指し直しが行われている。

 1局で2回の千日手は稀だが、それでも藤井自身はタイトル戦で経験している。昨年6月に藤井が防衛を賭け挑戦者の永瀬拓矢王座(30)を迎えた棋聖戦の第1局で、2度の千日手があった。この時、藤井は永瀬に敗れたので、今回も嫌な予感が脳裏をよぎったかもしれない。

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