「信頼関係は地に落ちた」と公明は怒り心頭 「自公亀裂」の複雑すぎて解けない方程式と萩生田政調会長の焦り

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因縁の東京15区

 そこで公明は、「10増」される5都県の中で、選挙区が1つずつ増える埼玉・愛知で、「比例代表選出議員の選挙区での擁立」をすでに発表している。

「その埼玉・愛知とは別に、選挙区が5つ増える東京では、2人の候補を擁立したいと公明は考えてきました。1つが29区でもう1つが28区です。これに対して、自民からは“公明に譲りすぎ”との声がとても大きかった。“29区では地元の反発を何とか抑えられても、28区では自民候補が固まっていて、公明の要望を受け入れがたい“ということになったようです。その代わり、東京12区(北区・板橋区)や東京15区(江東区)での擁立で調整できないかとの打診もしています(同)

 自民からすればゼロ回答ではないということなのだろう。実際、自民の都連会長で調整を取り仕切る1人である萩生田光一政調会長としては、「15区なら悪くない話だ」との立場なのだという。そしてそこには、やや複雑な経緯が横たわっているようだ。

保守分裂の遺恨

「その15区では、前回の衆院選で都連が推薦した自民党候補が無所属の柿沢未途氏に敗れました。外相を務めた父・弘治氏以来の地盤がありますからね。当選を受けて柿沢氏は自民に追加公認されましたが、未だ支部長に選ばれていません。保守分裂選挙を戦って敗れた側である党や都連には遺恨があり、そう簡単に柿沢氏を次期衆院選の候補とみなすわけにはいかないということです」(同)

 保守分裂はその後も続き、江東前区長の急逝を受けて行われた4月23日の区長選でも、都連が推したのは前区長の息子である都議だったのに対して、柿沢氏側の推すのは元自民党衆院議員だった。結局、勝ったのは柿川氏側である。

「萩生田氏は柿沢氏に息子を応援するように依頼したものの、柿沢氏はこれを拒否したようです。柿沢氏は表立っての支援は控えたものの、彼の系列区議がフル回転して勝ってしまった。まぁそもそも都連が推した候補がボンクラだったという指摘もあるのですが」(同)

ゼロ回答に近い

 都連や萩生田氏としては1度ならず2度までもコケにされた格好で、怒り心頭といったところだろう。ここに公明党がどう関係するのかといえば――。

「柿沢系と公明・創価学会とは長年、良好な関係を形成してきました。今回の江東区長選でも公明・学会は情勢分析に従って前区長の息子のサポートには回ることがなかったとのこと。萩生田氏もそのことは耳にしているので、“15区の公認は柿沢には渡したくない。空白区になれば、公明がそこで候補を擁立する分には全く問題ない”といった考えのようです」(同)

 しかし、公明にしてみれば、元々近い関係の柿沢氏のいる15区をもらっても候補は立てづらい。候補を立てず、柿沢氏が勝利しても柿沢氏が自民党に籍がある以上、公明の議席が増えるわけではない。

「そうですね。だから15区を自民から提案されても、それは公明にとって実はゼロ回答に近いわけです」(同)

 現状、自公の目の前にあるのは、正解の存在しない方程式のようなものなのかもしれない。

 衆院選の直前まで揉めに揉めた結果、まとまらなさそうな気配だ。

デイリー新潮編集部

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