片山杜秀氏と岡田暁生氏が語り尽くした『ごまかさないクラシック音楽』は、他の入門書とどこが違うのか

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ある程度聴きこんだファンのためのガイドブック

 書店の音楽書コーナーには、常に初心者向きのクラシック入門書が並んでいる。

「堅苦しいと思っていたクラシックが実は、こんなに面白い」

「むずかしい顔の作曲家が、こんなに人間臭かった」

──しかし、そんなに「面白い」「人間臭い」のなら、なぜ、いつまでも同じような入門書が出つづけるのだろうか。そろそろ「入門書」から次の段階に移るべきではないのか。

 もうごまかしのフレーズはやめて、ある程度聴きこんだファンのためのガイドブックがあってもいいのではないか──おそらく、そんな思いをこめてつくられたクラシック解説書が登場した。『ごまかさないクラシック音楽』(新潮選書)である。

 著者は2人──まず京都大学教授の岡田暁生氏。吉田秀和賞受賞の『音楽の聴き方』、小林秀雄賞受賞の『音楽の危機』など、多くの音楽論考を続々発表している気鋭の研究家だ。

 もう一人が、「週刊新潮」の連載コラム「夏裘冬扇」でおなじみ、慶應義塾大学教授(政治思想史)で音楽評論家の片山杜秀氏。『音盤考現学』などで吉田秀和賞、サントリー学芸賞を受賞している。

 本書は、まさに日本を代表する2人の“クラシック論客”による、累計20時間余の対談をまとめたものである。内容構成は、一応、音楽史どおり、古楽やバッハから始まり、古典派、ロマン派、近代、現代──の流れに沿って縦横無尽に「ごまかさずに」語り合う、博覧強記の対談となっている。

 果たしてこの本を、初心者というよりはもう少し聴き込んでいる一般のクラシック・ファンはどう読んだか。3人の方々に、本書を読んで改めて聴き直したというCDを持参のうえで、感想を語り合ってもらった。

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