米国は「格差社会」どころか「総貧困社会」に? 多くの国民は既に景気後退の痛みを感じている

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米国は「格差社会」どころか「国民総貧困社会」に?

「大部分の米国人が『現在の暮らしは50年前よりも悪くなっている』と感じている」との指摘がある(5月15日付ZeroHedge)ように、米国は「格差社会」どころか「国民総貧困社会」になってしまった感が強い。

 そのせいだろうか、リセッション入りしていないのにもかかわらず、生活困窮者や福祉施設に食料を提供するフードバンクの需要が高まっており、その水準はパンデミック時と同様の水準となっている。ジョージア州アトランタ地域では、食料配給に頼っている人の4割がこれまで配給を受けた経験がなかったという(4月30日付ロイター)。

 家賃が払えず、ホームレスになる米国人も日に日に増えている。

 多くのテック企業を輩出したカリフォルニア州サンフランシスコ市の海岸沿いでは、全長2マイル(約3.2キロメートル)にわたってホームレスが寝泊まりするキャンピングカーの行列ができる有様だ(5月8日付ZeroHedge)。

 同市内では「家賃の高騰などで都心部に人が減ったことで犯罪が増える」という悪循環が起きている。万引きが組織犯罪化していることに悲鳴を上げたショッピングモールの閉店も相次いでいる。このため、一部の地域はゴーストタウンになっており、ホームレスたちの生活環境は悪化の一途を辿っている。

 5月14日付ニューヨーク・タイムズは「米国の大都市で路上生活に追い込まれた多くの人々が命を落としている。カリフォルニア州サンディエゴ市のある病院では、昨年だけで10500人のホームレス患者が搬送された。現場からはホームレスへの支援に積極的でない政府に対する不満が爆発している」と報じている。

 このように、多くの米国人はリセッションの痛みを既に感じている。彼らが政府のウクライナへの軍事支援に「ノー」を突きつける日は近いのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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