1時間座っているだけで余命が22分削られる?  日本人は世界一「座りすぎ」専門家が指摘

ドクター新潮 ライフ

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理想ではない現実的な対策

 ですから、理想は理想として、家の中でまで「30分に1回の座位中断」を強く意識するのではなく、やはり職場などで、ちょっと席を立つ習慣を身に付けることが、絵に描いた餅ではない現実的な対策だと私は思います。どうしても座り続けなければいけない環境であれば、椅子に座ったまま踵(かかと)の上げ下げをして「第二の心臓」とも呼ばれるふくらはぎを動かすだけでも大分違います。

 20世紀から21世紀にかけて、科学技術は目覚ましく進歩し便利になった一方、人間はどんどん座る時間を延ばしていきました。座ったまま指を動かしてキーボードを打つだけでほとんどの事が済んでしまう。今では音声認識AIが登場し、指すら動かさない時代に入ろうとしています。

 樹上から地に降り、四足歩行に近い二足歩行から始め、完全な二足歩行をするようになった人類は今、技術の“進歩”によりパソコンの前に座って前屈みとなり、“退化”しているともいえます。

 20世紀から21世紀にかけてが「立つ→座る」時代だったとすれば、22世紀に向けて「座る→立つ」時代に変え、さらに活動的な生活に変えていくことが人類の健康増進につながる。今こそ、時代の転換に向けて“立ち上がる”時なのかもしれません。

岡 浩一朗(おかこういちろう)
早稲田大学スポーツ科学学術院教授。1970年生まれ。岡山大学教育学部卒業、早稲田大学大学院人間科学研究科博士後期課程修了。健康行動科学、行動疫学を研究テーマとし、日本学術振興会特別研究員、東京都老人総合研究所・介護予防緊急対策室主任などを経て現職に。『長生きしたければ座りすぎをやめなさい』等の著書がある。

週刊新潮 2023年5月18日号掲載

特別読物「最新『論文』『データ』が次々と… 運動だけではダメ『余命』を縮める『座りすぎ』を回避せよ」より

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