ブラック企業の上司から命じられ人妻を誘惑したばかりに…40歳夫が「公認の不倫」で恐怖を感じるまで

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 妻公認の「不倫」をしている男性がいるという。世の中は案外広いので、「夫の不倫を公認する妻」もいるかもしれないが、公認されている夫はどういう気持ちなのだろう。それはもはや妻に監視、支配された恋愛ではないのかと思うが、彼自身はどう考えているのだろうか。そんな思いで会ったのは、徳田勇弥さん(40歳・仮名=以下同)だ。中肉中背、メガネの奥の瞳が優しげな男性だった。

 東京都内で生まれ育った勇弥さんは、「ごく普通のサラリーマンの父と、パートで働く母」との間に産まれた長男。2歳年上の姉がいる。この姉が子どものころから才気煥発、しかもスポーツも万能で小学校では目立つ存在だった。勇弥さんも同じ小学校、中学校に通ったが、いつも「え、あの徳田さんの弟?」と言われ続けた。

「ずっとそう言われていると、いじけるとか拗ねるとかを通り越して『あの姉の弟です』と自らを卑下することで存在感を示そうとするようになるんですよ。姉は本当に優秀で、たいして勉強もしていなかったのに高校も大学も国立に進学、公費で留学もして、その後の人生もキャリアを追求しつづけています。結婚して子どももふたりいるし、義兄も優秀、しかもふたりとも性格もいい。もはや羨ましいとさえ思わないくらい(笑)」

 両親が姉の優秀さは認めながらも、弟にも配慮してくれたおかげなのか、勇弥さんは「自分は自分」と思いながら大きくなることができた。それは「両親の功績」だと彼は笑う。

「僕自身は本当にぼんくらというかなんというか。浪人したあげく、ようやく私立大学にひっかかって、卒業後は広告関係の中小企業に就職しました。ところがこの会社がブラックもいいところで、忙しいのはかまわないけど環境や人間関係が最悪だった。営業成績が上がらないからと社員全員の前で土下座させられたこともありました」

任された仕事は「誘惑」

 それでも仕事に食らいついていかなければと勇弥さんはがんばっていた。2年目に入ったころ、部長に「おまえに大事な仕事を頼みたい」と言われて張り切った。ところがその仕事というのは、「とある女性を誘惑すること」だった。このことは今でも彼の生々しい「傷」となっている。後悔してもしきれないと彼はうつむいた。

「その女性を誘惑することが大事な仕事につながると言われ、彼女がいる場所に行って誘惑しました。恋愛経験は豊富ではなかったけど、これが大事な仕事だし、うまくいけば大きな報酬が待っていると言われていたので、がんばらなければと思っていたんです」

 彼女が相当年上なのがひっかかったが、それでも勇弥さんは必死で誘惑し、会って3度目で陥落させた。証拠写真を撮ってこいと言われていたので、ホテルに入るところ、彼女がシャワーを浴びているところ、行為の最中などに隠し撮りをしたりふざけたふりをして携帯で撮ったりした。それを部長に報告すると「よくやった」と褒められた。今後、何か起こることも考えられるから携帯を変えろ、費用は会社から出すと言われ、素直に電話の機種を変更、番号も変えた。

「ところがそれ、仕事ではなかったんです。実はその女性は、部長の奥さんだった。部長は自分が浮気していて離婚したいために、妻が不倫したことにしようと考えた。そうすれば慰謝料を払わなくてすむから、と。僕がそれを知ったのは、部長が離婚して社内の女性と再婚してから。僕の中で何かがキレました。会社を辞めると言ったら『口止め料だ』とそこそこ多額の“退職金”をもらいましたが、それから気持ちが落ち込んで1年ほど何もする気が起こらなかった」

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