斉藤由貴、沢口靖子、上白石姉妹…第1回は1984年なのに9回しか行われていない「東宝シンデレラ」オーディションの秘密

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東宝芸能の居心地の良さも合格者たちの「特典」か

 グランプリの賞金は300万円(第9回)。ほかのオーディションと比べ高水準だが、突出しているわけではない。応募者にとって賞金より魅力的なのは、東宝が制作する映画やミュージカルに最優先で出演できることに違いない。

 沢口はグランプリを得た1984年、映画「ゴジラ」などに出演した。長澤もやはり、受賞年には映画「クロスファイア」に、萌歌もまた受賞年にはショートムービー「空色物語 『虹とシマウマ』」に出演している。いずれも制作は東宝。通常の新人女優よりはるかに早く、大きな役が得られる。これも優れた人材を集めたいオーディション主催側には強みだ。

 もっとも、白山は例外。東宝作品の出演前に「Dr.チョコレート」に出演している。身内の東宝作品に出て、ウォーミングアップを済ませてから外部作品に登場するのが通例だが、白山の場合は逸材だからだろう。

 オーディション合格者はそのまま東宝芸能に所属する。同事務所に所属する女優は合計50人程度なので、特に大きな事務所ではないが、居心地は良いらしい。ここで名前を挙げたオーディション出身者のうち、ほかの事務所に移籍したのは田中美里(2011年に移籍)しかいない。これほど移籍者がいないのは珍しい。東宝芸能の過ごしやすさもこのオーディションの魅力の1つになっているようだ。

 この事務所は、大学などに在学中の場合、学業優先。これも居心地の良さにつながっているのではないか。

 大阪府堺市出身で、高3で第1回のグランプリに選ばれた沢口靖子は、合格していた国立奈良教育大学の入学を辞退して上京した。しかし、萌歌と萌音は大学を卒業した。NHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」で航空学校生・矢野倫子役に扮した山崎紘菜は、神田外語大学を出た。いずれも在学中は仕事量がセーブされていた。

 水野真紀の場合、都内の高校2年生だった1987年に第2回の審査員特別賞に輝いた。東宝芸能入りが決まったものの、短大卒業時までは芸能活動をしないというのが本人側の要望だった。かなり異例の条件だが、受け入れられ、芸能界デビューはNHK連続テレビ小説「凛凛と」になった。

 コロナが一段落し、ほかの芸能事務所も再び新人発掘に力を入れ始めている。「東宝シンデレラ」オーディションを凌駕するオーディションは出現するか。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年のスポーツニッポン新聞社入社後は放送記者クラブに所属し、文化社会部記者と同専門委員として放送界のニュース全般やドラマレビュー、各局関係者や出演者のインタビューを書く。2010年の退社後は毎日新聞出版社「サンデー毎日」の編集次長などを務め、2019年に独立。

デイリー新潮編集部

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