NHK「のど自慢」 番組責任者が明かす“予選会の知られざるカラオケ活用法”

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2人体制の理由

 中村氏が行ったリニューアルは、カラオケ音源への変更だけではない。2013年から司会を担当していた小田切アナウンサーから、廣瀬智美アナと二宮直輝アナが隔週で担当することも決断した。

「小田切アナとは古い付き合いで、普段は“千ちゃん”と呼んでいます。彼に『コロナに罹患したらどうするの?』って質問したことがありましたが、僕も答えは分かっています。運を天に任せるしかないことは明らかで、これは危機管理上、大変な問題です。千ちゃんは10年間、1週も穴を開けることなく続けてくれました。素晴らしいことですが、要するに奇跡です。奇跡を規準にしてはダメだと思いました」

 2人体制なら、廣瀬アナか二宮アナのどちらかに不測の事態が発生しても、もう1人が出演することができる。

「『のど自慢』は1年に46本を放送しますが、出演してくださるのはプロではない市井に生きる方々です。普通の方々を演者として迎えてテレビショーの司会を務めるという仕事は、精神的には非常な重圧でしょう。2人体制ならプレッシャーも減ると思います。2人体制を決断したら、片方を女性アナウンサーにお願いすることは自然に浮かびました。ジェンダーバランスを取ることができるからです」

のど自慢は「素敵な番組」

 小田切アナはエンターテインメント部門を得意とするアナウンサーとして高く評価されているが、今後は“後進の育成”も期待されているという。

「千ちゃんはステージアナウンサーとして様々なノウハウを持っていますが、彼が『のど自慢』への出演を続けていると後輩アナの指導に回ることができません。千ちゃんは『のど自慢』の顔として視聴者の皆さんに喜んでもらえましたが、後継育成という観点でアナウンサー室と協議を重ねました。そして最終的に、廣瀬アナと二宮アナの2人に担当してもらうことになったのです」

 視聴者で気づいている人は少ないが、細部のリニューアルを数え上げると枚挙に暇がない。例えば、番組のロゴもユニバーサルデザインの観点から視認性を高めるものに変えた。テロップのフォントもさらに見やすいものに変更している。

「長寿番組は素材がいくらでもあるという特徴があります。どんなに世相が変化しても、歌を歌いたい人と聴きたい人は必ずいる。つまり出場者は無限だというわけで、こんな番組はそうありません。『のど自慢』が放送されることは、日本に天災も疫病も戦争もなく、無事に日曜を迎えたという証明でしょう。NHKにとっては大切な番組です。今回のリニューアルで参加しやすくなったと自負しています。若い方も『「おじいちゃん、おばあちゃんが日曜のお昼に見ている番組だな』というところから一歩踏み込んで、ぜひ応募してください。『予選会に出場して良かった』と皆さん異口同音に仰ってくださいます。『のど自慢』は本当に素敵な番組なんです」

第1回【NHK「のど自慢」はなぜ生バンドからカラオケになったのか チーフプロデューサーが苦渋の決断を語る

デイリー新潮編集部

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