NHK「のど自慢」はなぜ生バンドからカラオケになったのか チーフプロデューサーが苦渋の決断を語る

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アコーディオンからバンドへ

 長い歴史を誇る「のど自慢」だけあり、今回に匹敵するような大きなリニューアルも経験済みだという。

「『のど自慢』は宮田輝アナウンサー(1921〜1990)が1949年から66年まで司会を担当し、たちまち人気番組になりました。この頃は『のど自慢素人演芸会』という番組名で、アコーディオンとピアノが交互に出演して伴奏していたんです。ところが宮田さんが司会を降板すると、番組の人気が凋落しました。視聴率が1桁に低迷し、予選会も40人ぐらいしか人が集まらないという危機的な状況になったのです。この時、当時30代だったスタッフが全面的なリニューアルを手掛けました」

 1970年4月、「NHKのど自慢」にタイトルを変更し、現在も使われているテーマ曲が採用された。そしてバンドで伴奏を行うようになったのも、この年からだったという。

「古賀政男さんの“古賀メロディー”なら、アコーディオンやピアノだけでも充分に再現できるでしょう。ところが、当時は歌謡曲が全盛で、ギター、ベース、ドラム、グランドピアノ、シンセサイザーによる演奏でなければ出場者も視聴者も納得できない時代になっていたのです。こうした前例からも、時代の趨勢に応じて伴奏スタイルも変える必要があるのは明らかです」

変化に対応

 アコーディオンがファイブピース(ギター、ベース、ドラム、ピアノ、シンセサイザー)に変わったのと同じように、ファイブピースがカラオケ音源に変わったわけだ。

「『のど自慢』が長寿番組であるのは、視聴者だけでなく出場者や予選会に参加してくださった皆さんのおかげであることは言うまでもありません。そして『最新のJ-POPを歌いたい』、『ヒットしているアニソンを歌いたい』という方々が増えています。求められる楽曲の変化にはビビッドに対応すべきです。カラオケ音源に変更すると決断したのは、こんな背景があるとご理解くだされば、私たち作り手としても非常に嬉しいです。何よりバンド演奏だった予選会でアレンジされた楽曲を歌い、『こんなはずじゃなかった』と落胆して帰られる方が激減したのは、カラオケに変えたおかげだと言えるはずです」

 第2回では、実際にカラオケがどう使われているのか、なぜ司会のアナウンサーが変わったのかなどを訊いた。

 第2回の【NHK「のど自慢」 番組責任者が明かす“予選会の知られざる舞台裏”】に続く。


【朝日新聞デジタル】「のど自慢」生演奏からカラオケに NHK「多様化する音楽に対応」(4月16日)

【毎日新聞】NHKのど自慢、刷新 生バンド伴奏→カラオケに 批判の声も(4月2日)

【産経新聞】「NHKのど自慢」生演奏からカラオケに 2日放送から バンドの味わい惜しむ声も(4月1日)

デイリー新潮編集部

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