弾薬持ってこいや! ワグネル創設者とプーチンの“本当の関係” 専門家は「プリゴジンの本音はウクライナ侵攻どころではない」

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スーダン内戦の影響

 ワグネルは民間企業であり、利益が最優先だ。高尚な企業理念などない。こうした姿勢は、昨年2月にロシア軍の侵攻で幕を開けたウクライナ戦争でも変わらなかった。

「ワグネルはロシア軍に対して全面的に協力しました。理由はもちろん利権狙いです。プーチン大統領は、戦争に勝利したらウクライナ南東部にあるドネツク炭田の採掘権をワグネルに与えると約束していたのです。ところが、NATOですらウクライナの敗戦を予想していましたが、ウクライナ軍は持ちこたえました。そのためロシア軍は焦土作戦に踏み切り、ドネツク炭田にも大きな被害が出てしまったのです」(同・中村氏)

 ワグネルは軍事会社であり、ドネツク炭田を再建できる資本も技術も持っていない。プリゴジン氏がウクライナ戦争でロシア軍に協力するメリットは早々に雲散霧消してしまったわけだ。

「加えて4月中旬、スーダンが内戦状態に陥りました。もし国軍が敗北すると、プリゴジン氏は金の採掘権という巨大な利権を失ってしまいます。ウクライナ戦争でもドネツク炭田の採掘権が絵に描いた餅に終わってしまったのですから、彼の本音はウクライナ戦争どころではなく、一日も早くワグネルの主力をスーダンに向けたいのです。唐突という印象を与えた停戦提案の裏には、スーダンの状況が大きく関係していることは明らかです」(同・中村氏)

ロシア軍の信頼は低下

 とはいえ、あれだけ軍や政府の批判を繰り返していても、プリゴジン氏とプーチン大統領の蜜月は続いていると中村氏は見る。

「4月下旬、ロシアの独立系メディアが驚くべきスクープ記事を配信しました。プーチン大統領の娘が経営する病院にワグネルやロシア軍の負傷兵が送られ、巨額の利益を上げているというのです。たとえバフムト攻略戦で成果を上げられなくとも、プーチン一家は巨利を貪っている。娘を儲けさせてくれているわけですから、プーチン大統領がプリゴジン氏と対立するはずがありません」(同・中村氏)

 プーチン大統領がワグネルを重用するのは、ロシア軍に対する信頼が低下していることも大きいようだ。

 読売新聞オンラインは5月1日、「ワグネル創設者、『マリウポリの虐殺者』に副司令官打診へ…露国防相との確執が背景か」の記事を配信した。

 ロシア国防省は4月30日、ロシア軍の補給を担当する国防次官にアレクセイ・クズメンコフ大将(51)が任命されたと発表した。前任はミハイル・ミジンツェフ大将(60)で、なぜ交代させられたのか詳細は分かっていない。

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