不倫夫を恐怖に陥れた元妻からの「19年越しの復讐」 そしてようやく気づいた自らのあやまち

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前編【5歳年下の妻から浮気を追求され逆ギレ、離婚された47歳男性の告白 「元妻がしたことには納得がいかない」】からのつづき

日向雅貴さん(47歳・仮名=以下同)はバツイチ。取引先に勤めていた5歳年上の紗都子さんに猛アプローチするも、いざ結婚すると「妻は思い通りになる」と家庭に閉じ込めるように。さらには同い年の杏子さんとの不倫に走る。これを咎められ「嫌なら出ていけ」と告げると、本当に紗都子さんは出て行ってしまった。

 ***

 その後、紗都子さんとは連絡がとれなくなった。そして1ヶ月ほどたったころ、弁護士の名前で、妻のサイン済みの離婚届が送られてきた。妻からは手紙ひとつ同封されていなかった。

「そのころ、僕にはもう、結婚の意味がわからなくなっていました。あれほど紗都子に情熱を傾けたのに、確かに自分の中には燃え上がるような気持ちはなくなっていたし。紗都子のために仕事をしているつもりだったけど、今思えば、仕事は人のためにするものでもないですよね。あのころの自分が何を考えていたのか、よくわからないんです」

 何か確固たるものがほしかったのかもしれない。それが紗都子さんと築く理想の家庭だったのではないだろうか。だが、理想の家庭は、彼の想像の中の非現実的な物語だった。彼自身も理想と現実の間で疲れ果てたのではないか。

 杏子さんからは会いたいと何度も連絡があった。だが彼はいっさい返事をしなかった。杏子さんのせいで夫婦関係が壊れたわけではないが、妻がいなくなってみると、彼女には何ら興味をもてなくなっていた。

「ひとりに戻って、ある意味でせいせいしたというか。どうせ僕にはまっとうな家族なんてできないんだといじけていました。一度離婚しても、まだ27歳でしたから、なんだか人生長いなと思ったりして。そこからようやく、自分のために仕事をし、ひとりできちんと生きていこうと」

 再婚しようとも思わなかった。女性は好きだったが、生活をともにすると違和感が生じるということもわかっていた。

19年越しの“復讐”

 ところがあれから19年がたった昨年、突然、若い女性が会社に彼を訪ねてきた。

「受付に呼び出されて行ってみると、学生みたいな女の子が立っていたんです。僕を見ると、『急にやってきてすみません。私が誰だかわかりますか?』と。申し訳ないけどわからなかった。すると彼女は『高橋紗都子の娘で鞠絵です』って。元妻は旧姓を高橋というんですよ。紗都子の娘がなぜ、と頭がこんがらがりました。『やっとお父さんに会えた』って。はあ? と思いました。『母は離婚したあと、私を産んだんだそうです』と言われて、まさかと言ってしまった。彼女は確かに紗都子に似ていました。でもそれが本当なら、なぜ紗都子は僕に伝えなかったのか」

 母はあなたを憎んでいたから、と娘は言った。その瞬間、彼は目から鱗が落ちるような気がしたという。そうか、自分は憎まれていたのかと。彼は自分が妻を傷つけたとはまったく思っていなかったのだろう。

「あたふたしてしまって、僕はきみの父親ではないと思うと言ってしまった。でもそのとき思い出したんです。離婚届を出してから、一度だけ紗都子に会ったことがあったと。憎まれたくなかった。だから『きれいに別れるために』と紗都子に言われて、ホテルで関係を持ったんです。もしかしたら紗都子にイチかバチかではめられたのかもしれない。彼女はいつかこうやって復讐しようとしたのではないか。そう思いました。だからその娘に、親子かどうか調べようと提案しました。料金は僕が払う、あなたはそれについてお母さんに言っても言わなくてもいいからって」

 その日から結果が出るまでの2ヶ月ほどの間、雅貴さんは鬱々とした日々を送った。なぜ紗都子さんは何も言ってこなかったのか。何を考えながらひとりで子どもを育ててきたのか。何も知らずにのうのうと生きてきてしまったことが悔やまれた。

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