不倫夫を恐怖に陥れた元妻からの「19年越しの復讐」 そしてようやく気づいた自らのあやまち

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鞠絵さんが語る「母」

 そして雅貴さんと鞠絵さんの親子関係が証明された。彼は鞠絵さんを呼び出し、真実を告げた。彼女は黙って聞いていたが、しばらくすると顔を上げた。

「母はどんな人だったんですかと急に問いかけてきました。『私は母方の祖母に育てられたようなもので、なんだか母を理解できなくて』という彼女の顔は苦悩に満ちていました。紗都子は、僕の思っていたような女性ではなかったのかもしれません。でも、そんなことは娘には言えない。『お母さんはどうやってあなたを育てたんですか』と聞いたら、『いろいろな男から施しをもらっていたようです。祖母によれば、男をとっかえひっかえしていたって。離婚の傷が大きくて立ち直れなかったんじゃないかとも言っていました。私は母とは心理的に距離があるので母の気持ちはよくわかりません』とさらりと言われました 」

 鞠絵さんは大学で心理学を学んでいると言った。自分と母親との関係に悩んだからこそ選んだ専攻だった。母にずっと雅貴さんが父だと教えられ、「会いたければ自分で会いに行けばいい」と言われていたそうだ。だから大学に入学してから会いに来た。

「お金がないから大学の初年度費用も借金した。学費を出してもらえませんかと彼女は言いました。そんなことを娘に言わせる紗都子に、僕は猛烈に腹が立った。学費は全額、僕が払うと言いました。このことはお母さんには言わないでほしいと鞠絵には告げました」

そこに現れたのはまさかの…

 ホッとしたように笑みを浮かべた鞠絵さんが急に愛おしくなった。彼は娘を行きつけの小料理屋へ連れて行った。そして30分ほどして突然、現れたのは、離婚前につきあっていた杏子さんだった。

「ひっくり返るほど驚きました。杏子はニヤニヤしながら、『あなた、結局、何も気づいていないのね』と。僕と同い年なのに彼女はちっとも変わってなくてきれいだった。そこで聞かされたのは、紗都子の浮気でした。相手は杏子の夫だった。それに気づいた杏子が僕に近づいた。そして僕たちは離婚し、杏子は腹を立てながらも紗都子に夫をとられないために結婚を継続した。杏子は紗都子に慰謝料を請求したけど、『あなたの夫の子を妊娠している。養育費をよこせ』と開き直られたそうです。それきりふたりは断絶したものの、杏子はずっと紗都子の動向を気にしていた。そして大学に入った鞠絵に近づいたんです」

 鞠絵さんが誰の子かを知りたかったのは杏子さんなのだろう。紗都子さんは、杏子さんには「あなたの夫の子だ」と言い張り、娘には雅貴さんの子だと言い続けた。もしかしたら、紗都子さん自身、誰の子かわかっていなかったのかもしれない。

「なんかもう、誰がいちばん悪いのかわからなくなりました。でも気づいたんです。いちばんの被害者は鞠絵だと。大人の都合で振り回された。かわいそうなことをしたと思いました。そう言うと鞠絵は、くすっと笑って『意外といい人なんですね』って」

 その後、雅貴さんは娘を通じて、紗都子さんに面会を求めた。だが鞠絵さんから、「母はお父さんに会いたくないって。母は今もつきあっている人がいるんですよ。お父さんももう母には会わないほうがいいと思う」と言われた。

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