「花粉症」による経済損失“3800億円”の衝撃 「特別手当」支給の企業も増加で「新たな国民病」は撲滅できるか

国内 社会

  • ブックマーク

Advertisement

 花粉症対策に国が本腰を上げて取り組む姿勢を見せ始めた。事実、専門家によると「花粉症による経済損失」は無視できるものではなくなっているといい、すでに民間では「花粉症手当」を支給する企業まで登場している。花粉症を克服する日は来るか。

 ***

 4月3日、岸田文雄首相は参院決算委員会の場で「もはや日本の社会問題といっていい」と花粉症について述べ、続けて「発生源対策、発生の予測、予防、治療と様々な対策が求められる。ぜひ結果を出したい」と強い口調で語った。

 担当官庁に当たる織田央・林野庁長官も、花粉の少ない杉の苗木の年間生産量を10年以内に「約7割にまで増加させる」ことを目標にすると表明。“花粉撲滅”に向けて国が本気で取り組む姿勢をアピールした。

 遅きに失した感はあるものの、国の危機感は「妥当だ」と話すのは、10年以上前から花粉症が日本経済に及ぼす影響を考察してきた「第一生命経済研究所」首席エコノミストの永濱利廣氏である。

「花粉の飛散量は前年夏の平均気温や日照時間と関係があるとされます。昨夏の記録的猛暑の影響で、今年の花粉飛散量は“過去10年で最多”といわれるなか、日本経済への悪影響も懸念されていた。実際、試算の結果、今年1月~3月の個人消費は3800億円程度押し下げられた可能性があります」

気温1度上昇で家計消費0.5%減

 過去のデータから、前年7~9月の平均気温が1度上昇すると、翌年1~3月の実質家計消費支出は0.5%押し下げられる関係にあるという。

「昨夏の平均気温が例年より1.4度上昇したことに基づけば、今年1~3月の実質家計消費支出は約3831億円減少した可能性があります。花粉の大量飛散によって、花粉症患者を中心に外出控えが起き、個人消費に悪影響をおよぼしたと考えられるためです」(永濱氏)

 外出が減るということは、外食や旅行などのレジャー消費の減少を意味し、また洋服などへの支出も減る。一方で、薬やマスクなどに使われる保険医療費や、家に籠もりがちになることで光熱・水道費は増加することになる。

「同じ業態でも、わざわざ百貨店へ足を伸ばす機会は減る反面、近所のスーパーやネットショッピングへの支出は増えるなど温度差はありますが、全体として消費は抑制されると試算されます」(永濱氏)

次ページ:「花粉症手当」の気になる中身

前へ 1 2 次へ

[1/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。