「あなたはまだ若い。やり直せる」離婚を切り出した18歳年上の妻、夫はその後も浮気を続け土下座させられ…ついに出た本音

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「ヒモ体質なのかもしれませんね」

 その直後、彼に連絡をとってきた女性がいる。かつて別れた優香さんだ。優香さんはあれからすったもんだしたあげく離婚、今はひとりだという。

「優香に会いたくてたまらなかった。旧友に会うと嘘をついて大阪で優香と待ち合わせました。優香の実家が関西方面なのもあって。そのときは3日ほどで帰りましたが、また会いたくなる。保菜美の地元では、若い学生と関係をもったために白い目で見られていましたからね。ミナからは『先生、ごめんね。でも私、先生に会いたい』とメッセージが来ていた。若いミナに会いたかった。だけどもう会えません。それもあって、一気に優香に傾いた」

 誰かがいないと生きていけないのに、その誰かのためにがんばろうとは思えない。彼自身、「ヒモ体質なのかもしれませんね」と言うのだが、彼がどこで自分の人生を諦めてしまったのかが見えないだけに隔靴掻痒の感があった。

 謙佑さんはいつも感情が安定していて、自分の気持ちを淡々と語る。同時にこちらにも興味を持ってくれるので話していてとても心地いいのだが、別れた瞬間、今日、彼は何を言いたかったのだろうといつも思っていた。物欲はほとんどないのに、女性には執着する面もある。彼の本質がつかめないのがもどかしかった。

 優香さんと「駆け落ち」するしかないとまで思いつめていたところへコロナ禍到来。優香さんとも思うように会えなくなった。保菜美さんに「恋人と会えなくて寂しい?」と尋ねられ、謙佑さんは飛び上がるほど驚いた。すべて見抜かれていたのだ。

一転、コロナを機に前向きに

 ところがコロナ禍が彼を変えた。つらいつらいと言っていた彼だが、一昨年からリモートで専門学校の勉強を続け、ある国家資格に合格した。なぜ突然、勉強を始めたのか、そしてこれからどうするつもりなのだろうか。

「勉強を始めたのはやることがなかったから。義母の年金と保菜美の収入に頼っていましたが、コロナ禍で保菜美の収入は激減。さすがに保菜美も疲れ果てたようで……。それを見て、僕はなにげなく地元のコンビニでアルバイトを始めたんです。お金を得ることに重きを置いていなかったけど、みんなが家にこもっているとき体を使って働くのは悪い経験ではなかった。 接客は苦手だったものの、淡々とやっていると、ありがとうと言ってくれるお客さんもいる。人にありがとうと言われるのはいい気持ちだなと思ったので、僕もありがとうございましたと言うようになった。なんだか急に生きる気力が出てきたんですかね、勉強なんてほとんどしたこともないけど、やってみるかと思って」

 今後は取得した資格を活かした道へ進もうと考えているという。今も保菜美さんとの関係は、決していいとは言えないが低め安定といったところ。保菜美さんは55歳、義母は83歳になった。

「考えてみたら、あなたはまだ30代。かわいそうだと思う。いつでも出て行っていいからねと、保菜美はときおり思い出したように言うんです。でもその言い方が、捨てたら恨むぞと言っているようで……。僕は、この世で保菜美をいちばん信用しています、人として。僕を救い出してくれたのは彼女だから。でもこのまま義母と妻を見送るだけの人生でいいのかと思うことはありますね」

 だからといって、欲望に従ってがむしゃらに生きるような気力もないとも言う。もともと生きるエネルギーが低いんですねと苦笑する彼だが、その低いエネルギーでよくここまで生き延びてきたともいえる。もしかしたら、もともとすべてを受け入れるつもりだった保菜美さんは、何があっても彼と別れる気などないのかもしれない。

前編【【37歳夫の告白】18歳年上の妻と出会ったのは小学4年生の頃、絵画教室を開いていた彼女が抱えていた"重大な問題"】からのつづき

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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