「あなたはまだ若い。やり直せる」離婚を切り出した18歳年上の妻、夫はその後も浮気を続け土下座させられ…ついに出た本音

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妻の実家にすがって生活

 保菜美さんの実家近くにアパートを借りての生活が始まった。保菜美さんはほとんど実家で過ごし、入院中の父を見舞い、母のめんどうを見た。謙佑さんは介護ヘルパーの資格をとって勤務したが、人間関係がうまくいかず頓挫。結局、保菜美さんの親に生活費をもらうありさまだった。

「なんというのか、僕には働いて自分で食っていくという気概がないんですよね。もともと食べることにそんなに興味がないし、1日1回、ご飯と味噌汁があればいいやという感じ。人生において興味をもてるものに巡り会えていないのか、僕という人間がとことんダメなヤツなのか……。まあ、後者だということはわかってきましたが」

 あたかも「ダメなヤツ」のようにおっとりと話す彼だが、実は政治から社会事件まで知識量はとてつもなく多い。特に日本の歴史や文学については詳しい。古文書も読めるのだという。だが「知識のための知識になっていて役には立たない」と苦笑する。

 生きる目的がつかめないまま、保菜美さんの実家近くで暮らしていた彼だが、2年後に義父が亡くなり、夫婦は妻の実家に越した。保菜美さんは今度こそと地元の学校やカルチャーセンターを回って自分の技術を売り込んだ。同時に実家の一部屋をアトリエにして、本格的に創作活動に打ち込むようになった。地元だけあって引きもあり、週に4回は絵画の先生として才能を活かしている。

「老いていく妻を見るのがつらい」

 謙佑さんは主に家にいて、義母のめんどうを見たり家事をしたりしていたが、「謙佑が家で絵画教室を開けばいい」と妻に言われて始めてみた。ときどき保菜美さんも来てくれるので、美大を目指す高校生などもやってくるようになった。保菜美さんが絵画関係で受賞したこともあって教室は人が集まった。知る人ぞ知る小さな賞ではあったが、彼女にとっても自信になったようだ。

「そこでおとなしくしていればよかったんですが、教室に来ている浪人生と関係を持ってしまったんです。僕、自分が病気なんじゃないかと思いました」

 32歳のときだった。慕ってくれる19歳のミナさんから誘惑され、地元の居酒屋で飲んだあげくホテルへ行った。ふたりで手をつないで歩きながらホテルに入って行ったところを誰かに見られたらしい。

「妻と義母の前で正座させられて謝りました。若いミナと一緒にいるのが本当に楽しくてたまらなかった。考えたら僕には青春時代がなかったんです。『だから好きなように人生を送ればいいって言ったじゃない。ここに来たのはあなたの意志でしょ。私に恥をかかせないで』と妻は激怒しました。嫉妬じゃないんですよね、あくまでも世間体が悪いということ。妻の気持ちを確かめたかったのかなあ。義母にいたっては、『あなたはしょせん、居候なんだから』って。ああ、実母にも似たようなことを言われたなと絶望感でいっぱいになりました」

 申し訳ないけどと断りつつ、彼は言った。「老いていく妻を見るのがつらい」と。義母と妻、ふたりの老婆に囲まれていると、自分も老人になったような気持ちになる。その雰囲気に取り込まれていくのが怖いとも言った。

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