コオロギ食騒動から1カ月 研究者は「“昆虫は代替たんぱく質“が誤解を生んだ」

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収穫物は洗浄後に加熱殺菌

 鈴木氏は昆虫養殖のマニュアル化を目指した研究も行っている。

「コオロギの養殖では、家庭で使うような蓋つきの衣装ケースを飼育箱として衛生的に使うことができます。紙製の卵トレイなどのシェルターを入れておくと、共食いを軽減することもできます。オスは成虫になると翅(はね)を擦り合わせて音を出しますが、騒音レベルではありません。重要なのは温度管理です。気温30度くらいをキープすれば、種によっては卵から孵化し、成虫になるまで1カ月半ほどです。1年間に8回程度収穫することができるので、気温が低い季節や地域でも、排熱利用や断熱性を高めた空間で飼育すれば、光熱費などのコストを抑え、安定的な利益に繋がる可能性があります」

 食用として加工する場合は、どのように処理するのか。

「1日くらい絶食させて、消化管内の中の消化物を出し切ります。虫体ごと洗浄・加熱殺菌したのちに、鮮度を保つために冷凍するか、乾燥させて粉にすることで食用になります」

 こう聞くと、食欲が失せるという人もいるかもしれないが……繰り返すが、あくまで食べたいと思った人が昆虫食をすればいい。鈴木氏は昆虫に食材としての魅力も感じているという。

「研究を始めた当時は、コオロギは生物学分野で昔から使われてきた実験動物という印象で、コオロギパウダーを使った食品を口にしても、おもしろいけど積極的には食べないかな……という気持ちがありました。ところが、新鮮なコオロギとバッタを竜田揚げしたものを食べて、美味しかったんです。コオロギやバッタは油との相性が良く、食感は小エビに似ています。虫の見た目が苦手な人は多いとは思いますが、パウダーにするよりも新鮮な虫体を加熱調理して食べるほうが美味しさを感じられると個人的には思います。歴史的に見ると、日本でも海外でも『美味しいから』という理由で昆虫が採集され、食べられてきたことがわかっています。一方で、食べ物がない時に食べる救荒食物だと実体験から認識されていたり、印象を抱いていたりする方もいると思います。このイメージを改善し、『美味しいから食べる』、つまり食を豊かにする食材の一つとしての可能性を昆虫養殖研究を通して検証していきたいです」

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