買い物中の尿漏れで自己嫌悪、トイレに駆け込んでも窮地に…61歳「前立腺がん患者」が語る“想像を絶する異変”

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尿漏れで自己嫌悪

 原因が分かっても、塞ぎ込んでしまった。食事をする気持ちもなくなり、ベッドに横になった。人間失格と烙印を押されたようだった。

 なぜ男性用の尿漏れパッドに関する情報がネット上に少ないかも理解した。経験者は60代以上が多く、ネットに疎いということも大きいだろう。だが、根源的な理由は、尊厳が奪われたようで辛いのだ。尿を漏らし続けるという屈辱的な体験を、わざわざネット上に投稿する気分にはなれない。

 それでもめげず、使用を推奨されているボクサーパンツやブリーフと尿漏れパッドの組み合わせを試すうち、徐々に日常生活を快適に過ごすことができるようになっていった。

「手術後の変化として、お風呂が大好きになりました。手術前は普通に入浴していただけでしたが、術後は尿漏れパッドを外せるので爽快感が桁違いなのです。ある日、浴室から出て脱衣場で体を拭いていると、床に尿を漏らしてしまいました。たちまち自分に対して猛烈に腹が立ち、自己嫌悪から『手術なんてしなければよかった』と激しく後悔しました」

 お風呂で幸せな気持ちになっていた分、余計に奈落の底へ突き落とされたような感覚になったのだ。

「冷静さを取り戻すと、まず一人暮らしでよかったと考えました。もし妻が側にいたら、激しく当たり散らしていたでしょう。それほど精神的に動揺しました。一人暮らしですから、自分で精神を安定させるしかありません。そうするうちに、だんだんとではありますが、尿漏れをする自分を許せるというか、一緒にやっていけるようになりました」

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