買い物中の尿漏れで自己嫌悪、トイレに駆け込んでも窮地に…61歳「前立腺がん患者」が語る“想像を絶する異変”

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遂に退院

 結局、一睡もできずに朝を迎えた。徹夜で格闘していると、尿漏れについて一つの発見があった。ベッドから立ち上がった時や、廊下を歩いていると濡れる。だが、横になっていると漏れないようなのだ。これが本当だとすれば、夜に眠っても問題がないことになる。

 朝食が終わると、ベッドで横になってみる。確かに尿漏れはない。今夜は寝てみようと決心した。漏らしてしまったのなら、それはそれで仕方がない──。

 廊下を歩いていると、窓の外に取引先の建物が見えた。「入院前のように働けるのだろうか」と考えながら歩き続ける。起きていると尿漏れが起きるが、何とか浴衣は汚れていない。そして夕方になると、担当医から明日の退院を告げられた。

 退院の喜びと退院後の不安が交差しながら夜を迎えた。寝る前に何度もトイレに行く。「あの鎮痛剤があれば幸せな気持ちで寝られるかもしれないのに……」と考えているうちに徹夜の疲れからか寝てしまった。

「退院の朝、お漏らしはしていませんでした。横になれば大丈夫なのだと心強くなり、朝から荷造りに励みました。友人が迎えに来てくれて、車でホームセンターに向かってもらいました。そして尿漏れバッドを探しましたが、種類があり過ぎてどれを選んだらいいのか悩みます。スマホで検索しても、ほとんど情報が出て来ないのです。戸惑いながら、いくつか買ってみました」

スーパーで尿漏れ

 それから男性の「尿漏れと格闘する日々」が始まった。まずはネット通販の欠点に気づいた。価格は安いが、試供品を手に取って触ることができない。宅配便で届いた商品を開けてみると、装着する前からダメだと分かることもあった。

「ホームセンターで『種類が多すぎる』という印象を持ったのも事実とは異なりました。尿漏れパッドの7割は女性用で、男性用の商品は少ないのです。おまけに男性用の主流は“軽く漏れる人”に対応したもので、私のように大量に漏らすことを想定したものは稀です。介護用のおむつなら種類は豊富ですが、それを履くのはかなりの抵抗感がありました」

 日常生活が戻り、男性はスーパーに買い物へ出かけた。この時は入院中に使っていた尿漏れパッドを装着した。店内を回り、商品をカゴに入れて清算した。すると異変に気づいた。

「買ったものをエコバックに移し替えていると、太ももにひやりとした感触が伝わりました。手を伸ばすと濡れています。『最悪だ! 周りの人に気づかれだろうか!?』。体を小さくして、うつむき加減で急いでスーパーを出ました。傷口が痛みましたが、それどころではありません。恥ずかしさと情けなさで死にたくなるような気分です」

 帰宅して確認すると、原因が判明した。小さな字で「この尿漏れパッドはトランクスには使えない」と書いてあった。

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