「“自分は老けている”と思うと死亡リスクが増大」「嫌な医師とは関わらない」 抗加齢医学のパイオニアが説く「若返り術」

ドクター新潮 ライフ

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若作りの効用

 脳やメンタルの健康を保つもう一つのお勧めは「若作り」です。

 とりわけ昭和型の男性には、若作りなんてみっともないと感じる人も少なくないかもしれません。しかし、病は気からであり、老化も気からなのです。実際、「自分は老けている」と思う気持ちが強い人は、そうではない人と比べて心血管疾患死亡率が41%も高く、実際の年齢より平均で5歳老けて見られるという研究報告もあります。

 また、ハーバード大学の研究では、70~80代の人に、20年前の流行服を着て、さらに当時の映画などを観てもらったところ、わずか1週間で情報処理能力が上がったと示されました。

 私自身、こんな患者さんの例を目の当たりにしたことがあります。

 高齢の女性で、いつも着物でバシッときめていた人なのに、ある時、お化粧がちょっと崩れていた。すると、どうも会話がかみ合わないことが増えていき、次第に「今日は何月何日ですか?」という簡単な質問にも答えられなくなっていった。聞くと、その女性はある時から独居になったそうで、コミュニケーション機会の減少と、身なりの崩れ、認知症との相関性を改めて感じました。

 やはり、見た目を若く保つことは、文字通り若返りにとって重要なのです。なにも60歳の人が20代のファッションをする必要はありません。10歳か20歳下くらいを意識して若作りすれば、何よりもまず気分が高揚します。すると、外出する意欲も増し、人と喋る機会が多くなり、脳へ良い刺激を与えられる。

 男性であれば、ちょい悪オヤジ、大いに結構。若作りによる「気持ちの張り」はバカにできません。私自身、もうすぐ60歳ですが、気持ちは40代のつもりで、頑張って細身のパンツをはいたりしています。若作りすることは、見た目だけでなく、これまで説明したように心身を若返らせてくれるのですから、恥ずかしがることなく堂々と「ちょい若作り」することをお勧めします。

多剤服用の弊害

 そして、若返りのための五つのカテゴリーの最後、「医療」について、やはり二つのことを推奨したいと思います。

 まずは「薬は5種類までにとどめる」。厚生労働省の統計データ(2016年)によれば、薬を処方されている75歳の患者さんの実に約4分の1が、6種類以上の薬を処方されています。

 そして、東大病院老年病科が2400人ほどの患者さんのデータを分析したところ、とりわけ6種類以上の薬を服用していると副作用が急激に多くなることが判明しています。多剤服用(ポリファーマシー)の弊害です。

 もちろん、絶対に欠かせない薬もあるでしょうが、薬によって体を害してしまっては本末転倒です。医師と相談し、無駄で不要な薬はないか、検討してみることが大事でしょう。

 最近、「服薬アドヒアランス」という言葉が注目されています。医師から一方的に薬を与えられるだけでなく、患者さんも積極的に服薬方針の決定過程に参加し、納得した上で薬を飲むといった意味です。最終的に自分の体を守るのは自分ですので、服薬アドヒアランスを意識していくことがこれからの時代は大切でしょう。

 私自身、医師でありながら実のところ薬はあまり好きではありません。なぜなら、病は「自分の治癒力」、そして生活習慣を改善することで治すのが基本だからです。

 分かりやすいのは風邪薬です。風邪薬として処方される薬は、熱を下げたり、鼻水を出にくくするといったように対症療法に過ぎず、「治療薬」ではないのです。最近、風邪で無闇に抗生物質を処方しないという意識がようやく少し浸透してきた気がしますが、自分の体から治癒力が失われていては、いくら薬を飲んだところで治るものも治りません。

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