「“自分は老けている”と思うと死亡リスクが増大」「嫌な医師とは関わらない」 抗加齢医学のパイオニアが説く「若返り術」

ドクター新潮 ライフ

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「パソコン医師」

 そして、医療におけるお勧め若返り術の二つ目は、「嫌な医師とは関わらない」です。医療は日進月歩で、現代は「エビデンス・ベースド・メディスン」の時代です。全ての医療行為はエビデンスに基づいて行われています。したがって、医師である私が言うのははばかられるところもありますが、どんな医師でもそう変わらない医療を提供できる時代ともいえるのです。

 そうであれば、上から目線だったり、ろくに説明もしない「嫌な医師」と付き合う必要はありません。例えば、患者さんとは目も合わせようとしない医師が今でも存在します。

「はいはい、そうですか。変わりないですか。じゃあ、同じ薬を出しておきます。はい、ではまた」

 その間、ずっとパソコンのほうを見てカルテを打ち込むばかりの医師……。

 医師は偉い。それは昔の話です。医師と患者さんは対等。それが今の時代です。偉そうな「パソコン医師」から治療方針の説明を受け、患者さんが納得して治療を続けていくのは極めて難しいでしょう。そして、納得できなければ病気を治そうという意志も湧いてきません。であれば、お互いに理解し合える医師のもとで治療をしていくのが正しい姿なのです。従って、「気の合う医師」を見つけることが重要になります。相性こそが大事なのです。

「またあの先生に会いにいかないといけないのか。嫌だな」なんて感じながら、毎月病院に通っていたら、そのストレスによって自律神経が乱れ、健康は損なわれてしまいます。健康を阻害されることは、老化の速度を遅らせる、つまり若返りにとっての大敵です。今の主治医とはどうも気が合わないと感じている人は、遠慮することなく別の医師を探すことをお勧めします。

若返りに向けた正のスパイラル

 これまで、2回にわたって「食事」「運動」「生活習慣」「脳/メンタル」「医療」の五つのカテゴリーに分けて若返り術を紹介してきました。その数は10個にのぼりますが、大切なのは「できるところ」から始めることです。10個全てを実践する必要など全くなく、どれか一つでも自分に合い、楽しみながら実践できる若返り術を試してみてください。なぜなら、繰り返しになりますが、どんなに効果的な若返り術であっても、続けられなければ無意味だからです。そして、継続にあたって大事なのはモチベーション、つまり楽しむことです。

 そうやって10個のうちの一つでも実践してみて、少しでも体調が良くなり、「残念な老化」を防げていると実感することができれば、それが新たなモチベーションを生み出し、もう一つ試してみよう、さらにもう一つ……といった具合に、「若返りに向けた正のスパイラル」に入っていける。そうなればしめたものです。

 いずれの若返り術も、始めるに遅いということはありません。なによりも、前向きに生きることが若返りの最大の秘訣(ひけつ)ですから、結局のところ、「私なんてもう手遅れ」と悲観することこそが若返りの最大の敵なのです。

伊賀瀬道也(いがせみちや)
愛媛大学大学院抗加齢医学講座教授。1964年生まれ。愛媛大学医学部卒業。公立学校共済組合近畿中央病院循環器内科、米国Wake Forest大学・高血圧血管病センターなどを経て、2006年に国立大学では珍しかったアンチエイジング研究のための抗加齢センター(当時)を開設。日本抗加齢医学会、日本老年医学会等に所属。『100歳まで生きるための習慣100選』などの著書がある。

週刊新潮 2023年3月23日号掲載

特別読物「『抗加齢医学』のパイオニア教授が厳選 老けないための『最強脳』『メンタル』『医療』」より

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